徳島市が、市文化センター跡に建設を予定している新ホールの4案を公表した。

 遠藤彰良市長が就任して2年半。新町西地区から徳島駅西側駐車場、そして現候補地と変更を重ねつつ「一日も早く整備する」と強調してきた重要案件である。だが、新ホールに対する市民の期待が膨らんだかは疑問だ。

 4案のうち3案は、いずれも大ホール1200席とリハーサル室を備える。300席の小ホールや会議室、活動室の有無によって、建設費が67億~77億円と異なる。残る1案は大ホール1500席と活動室を配し、76億円とした。

 新ホール整備の検討会議に示されたのは、こうした席数や建設費などの概要にとどまる。肝心の理念やビジョンは明らかになっていない。

 具体像は見えないままである。本来はどんなホールを造り、どんな事業を展開するかを明確に描いた上で、規模などを詰めるのが筋のはずだ。

 新ホールの構想が持ち上がって25年余りたつのに、ゼロ領域からの検討が続いているのが残念である。遠藤市長は将来を見据えたビジョンを語らなければならない。

 県内文化関連団体のいくつかは1200席を支持している。できるだけ早く完成してほしいとの理由や、自主公演に適した客席数だからという意見のようだ。

 1200席が3案を占めたのは、市も同じ意向を持っているからなのだろう。

 だが、人気の国内アーティストのコンサートは、採算面から1500席は要るというのが興行主の共通認識である。これを踏まえ、新町西の計画では大ホールを1500席とした経緯がある。

 遠藤市長は高額な事業費を問題視し、新町西の計画を白紙にした。事業費を抑えようというのは理解できる。とはいえ、収容能力を安易に縮小するのはいかがなものか。

 席数の抑制が人気アーティストの公演誘致に影響するようでは、若者らは失望するだろう。四半世紀にわたって積み上げてきた議論を無駄にしてはならない。

 敷地の広さや事業費がネックになるのなら、県と市が協力して取り組めないものか。隣接する県立のとくぎんトモニプラザを、新ホールと一体的に活用する方法などだ。

 現に秋田県では、県と秋田市が共同で254億円の文化施設を新設する。地上6階、地下1階に2千席と800席の大小2ホールやレストラン、研修室を設け、3年後の開館を目指すという。

 自治体が財政難に悩んでいる今こそ、県市連携の価値は高まろう。例えば、移転後の徳島中央署までの広い敷地を候補地にできれば、新ホールの姿も随分変わってくるのではないか。

 数十年先まで徳島の芸術・文化活動の中心的な役割を担うホールである。市民、県民が愛着を持てない、中途半端な施設を造ることだけは避けなければならない。