安倍晋三首相が、日本の首相として約7年ぶりに中国を公式訪問し、習近平国家主席と会談した。

 両首脳は「新たな時代」の日中関係を構築する方針で一致した。

 恒久的な平和友好関係の発展をうたった日中平和友好条約の発効から、ちょうど40年の節目でもある。関係改善の機運を確かなものにしたい。

 日中関係は2012年、沖縄・尖閣諸島の国有化を機に悪化した。隣国である日中の首脳が、スムーズに意思疎通を図れないのは双方にとってマイナスである。

 首脳会談では、安倍首相が来年の訪日を要請したのに対し、習氏は「真剣に検討したい」と応じた。日中首脳の信頼を醸成するためには、相互往来が欠かせない。

 首相は「競争から協調へ」「脅威でなく協力のパートナーに」「自由で公正な貿易の推進」の三つの新原則を提案した。習氏も「両国関係は正しい軌道に戻り、前向きな勢いを見せている」と応じた。

 中国が日本との関係改善に踏み出したのは、保護主義を強める米国のトランプ政権との間で、貿易戦争が起きたことが大きな要因だろう。日本に接近し、同盟関係にある日米の間にくさびを打とうとしているようだ。

 一方、日本も米国との新たな通商交渉を控えており、自由貿易を推進する意味でも、巨大市場を持つ中国との関係改善が急務である。

 日本は40年にわたる中国への政府開発援助(ODA)を終了するが、習氏もこれまでの援助を評価した。

 両首脳は第三国でのインフラ開発の連携を確認した。中国側には、経済圏構想の「一帯一路」に日本の協力を得る思惑がある。

 だが、「一帯一路」については、インフラ投資で相手国に多額の債務を負わせ、中国が影響力を拡大する枠組みだとの批判が広がっている。

 首相はインフラ投資に関する透明性などの確保を求めたが、慎重な対応が必要だ。

 今回の合意は幅広い分野に及んだ。東シナ海ガス田の日中共同開発では、交渉の早期再開を目指す。通貨交換協定を復活させ、先端技術と知的財産権保護の「イノベーション協力対話」を設立する。日中の民間企業・団体は協力に向けた52の覚書を締結した。

 これらの合意がどんな成果を挙げるかは、今後の具体的な取り組み次第だ。

 気掛かりなのは、安全保障を巡る課題である。尖閣諸島周辺で、中国船の領海侵入が繰り返されていることは看過できない。首相はこの状況の改善を求め、両首脳は意思疎通を強化し、不測の事態を回避することで一致した。

 まず中国は尖閣諸島での領海侵入をやめるべきだ。不信感を高める行動を慎まなければ、真の関係改善は難しい。

 南シナ海で中国が進める軍事拠点化も見過ごせない。

 安全保障上の懸念を着実に取り除く努力を重ねたい。