神山町議会が全議員(1人欠席)で上京して国への陳情を行ったことなどに住民から批判が出ている問題で、過去5年間に海陽、牟岐両町議会も全議員が上京して陳情していたことが分かった。両町議会は1回だけだったが、神山は1年おきで慣例化していた。一方、県内の他の21市町村議会は「陳情は議会を代表した数人で十分」などとして全員で出向くことはしていない。全議員が参加する陳情の在り方が改めて問われそうだ。

 徳島新聞が全24市町村の議会事務局に対し、12年から16年までの5年間に全議員で東京を訪れ陳情したことがあるか聞いた。

 神山町議会は、11、13、15年と今年の秋に全議員(各回欠席者あり)が上京していた。樫本雄一議長は「全員の方がインパクトがあり効果も高い。他自治体より開発が遅れており、陳情に力を入れる必要がある」と話した。

 海陽町議会は今年9月28、29日、全議員14人が海部道路の早期着工を国に要望した。見吉政貴議長は「全員陳情は今回が初めて。熱意を強く訴えるため」と述べた。29日には、公務で都内を離れた議長を除く13人が東京スカイツリーに上ったという。入館料は議員が負担した。

 牟岐町議会は10月26、27日、全議員8人が東京に向かい海部道路の早期着工を求めた。町議会事務局は「全国の議会広報研修会への参加も兼ね訪れた。研修会に出席したのは全議員が議会の広報作成に関わっているため」と説明した。

 同様の事例がない市町村議会は、理由について「議長や副議長、関係委員会で行う」(上勝、勝浦両町など)「事故があれば一大事。全員で出向くのは市政の危機管理上から考えられない」(鳴門市)などとした。

 地方議会の実態に詳しい法政大の廣瀬克哉教授(政治学)は「全員で陳情に行く必然性は乏しい。全員による陳情が効果を持つならば、地域によってインフラ整備の進み具合が異なるはずだ」と話した。

 山梨学院大の江藤俊昭教授(政治学)は「全員陳情の慣例化はいかがなものか」と疑問視した上で「陳情でどんな成果が挙がったかを住民に報告書を作って知らせることが肝要だが、なければ問題だ」と指摘した。