イモ穴に、冬場の保存食となるサツマイモを入れる日浦さん=つるぎ町一宇漆日浦

 厳しい冬の訪れを控え、つるぎ町一宇地区の山間部では、収穫したサツマイモなどを床下に開けた「イモ穴」に入れる作業が行われている。稲わらやもみ殻を敷き詰めた穴の内部は、一定の温度や湿度に保たれ、芋類が凍結するのを防ぐ。町などは、世界農業遺産の登録を目指す「剣山山系の急傾斜地農法」の一つとして「イモ穴」の保存継承に努めていく方針だ。

 標高約700メートルにあるつるぎ町一宇漆日浦の農業日浦照美さん(78)宅では、10月下旬に今年の作業を行った。和室の床下にある直径約1メートル、深さ約2メートルのイモ穴の底に、わらを敷き詰めて積み上げ、壁際にもみ殻をまく作業を繰り返した。通気を確保するため、側部に穴を空けた竹筒を縦方向に差し込んだ。

 穴作りの作業と併せ、畑で収穫した「アカイモ」「シロイモ」の2種類のサツマイモ約150キロを入れた。家庭によっては里芋、ジャガイモなども入れる場合もあり、来年4月ごろまで保存できる。

 同町商工観光課によると、イモ穴は40年ほど前までは一宇地区の山間部でよく利用されていたが、生活習慣の変化で次第に姿を消した。現在は日浦さん宅を含め7、8軒しか使われていないという。

 そんなイモ穴の風習が注目されたのは、2014年12月に県西部を襲った大雪害。約70センチの積雪に見舞われた一宇地区で、住民は集落に閉じ込められ、2日ほど買い物に行けなかった。だが日浦さん宅などでは、イモ穴に蓄えたサツマイモがあったため急場をしのぐことができ、食糧に困らなかった。

 こうした経緯も踏まえ、県西部の官民でつくる「徳島剣山世界農業遺産推進協議会」は9月、農林水産省に提出した申請書類に、独自の保存食文化としてイモ穴を盛り込んだ。

 日浦さんは「食事に必要な分を取り出したり、種芋として使ったりして先祖代々使い続けている。冬場の生活に欠かせない」と話している。