東京・築地は、その名のごとく埋め立て地。ここに市場が移ったのはそれまで魚河岸があった日本橋が関東大震災で焼けたからだ。次の移転先は、大震災のがれきで埋め立てられた豊洲だ
築地も豊洲も、晴海も有明も、元々は海の中である。ウオーターフロントとかっこよく化粧しても、東京直下地震が来たら、震源上の超高層マンションは大丈夫?と考えてしまう
湾岸一帯が主会場になる東京五輪も地震が一番気掛かりだ。「心配無用。なんたって免震ですから」。そう説明されて納得した人は多いだろう。東日本大震災の記憶は、都市住民の頭から急速に薄らいでいる
免震・制振装置の検査不正事件。「納期が守れない」と、不合格品を高層ビルに取り付けた。その裏切りに顔を青くしているのは、「一生の買い物」と高級マンションを購入した人たちだ
免震でも制振でもないマンションを売り込んでいた、ある業者の弁を思い出す。「免震だから万全だと言うのを信じちゃいけない。地盤が良ければ、必要ないんだから」。値の張る装置をわざわざ付けるのは、地盤が悪い証拠だという
一理あるが、地盤が良くて、信頼に値する装置なら、それに越したことはないはずだ。地名は歴史。先人が残した知恵でもある。幾多の大災害を耐え抜いた土地なら、それが何よりの頼りだろう。