剣山の標高1800メートル付近で確認されたシセンムシクイ

剣山の標高1800メートル付近で確認されたシセンムシクイ

 中国に生息している小型の鳥・シセンムシクイが、剣山で確認された。国内で初めて。日本野鳥の会会員の中野宏一郎さん(71)=石井町石井、自営業=が発見し、撮影した写真や録音した鳴き声から日本鳥学会の会員が特定した。越冬地の東南アジアから中国に戻る途中、迷い込んだとみられるという。

 シセンムシクイはスズメ目ムシクイ科。ウグイスに似ており、体長は10センチほど。中国中・東部で繁殖し、東南アジアに渡って冬を越す。中野さんは7月上旬、剣山の標高1800メートル付近で見つけた。

 「シャー、シャー」と聞き覚えのない鳥の鳴き声を耳にして辺りを見渡したところ、高さ10メートルほどの木の上に止まり、数十メートル四方を移動しながらさえずる様子を確認。写真を撮影し音声を録音した。その後、同じ場所を2回訪れたが姿は確認できなかった。

 ムシクイ類の一種だと思ったが、図鑑で調べたり、愛好家仲間に尋ねたりしても種類は分からなかった。日本鳥学会員でムシクイ類を研究している渡部良樹さん(55)=東京都八王子市=のホームページを見つけ、音声のデータを送って判定を依頼。渡部さんは、声紋分析で中国の研究者が録音していたシセンムシクイの鳴き声と同じ波形になったことから、シセンムシクイの雄と特定した。

 渡部さんは、特定者として中野さんに発見時の様子を聞いて論文にまとめ、来年にも学会誌に投稿する。

 ムシクイ類を研究している山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の齋藤武馬研究員(41)は「もし本物だとすると、日本では初めてで貴重な記録になる。論文での発表を期待したい」と話した。

 中野さんは「国内初確認との知らせに、まさか、と思った。剣山で貴重な野鳥が見つかりうれしい」と話している。