天日干ししたススキなどを肥料用に保存する県西山間部の風物詩「コエグロ」が、標高約1000メートルにある東みよし町水の丸地区にお目見えした。“日本一高い標高にあるコエグロ”を掲げ、町や住民団体などが手掛けた。伝統的農法が残る地域の魅力を知ってもらい、県西部の「急傾斜地農法」をPRして世界農業遺産登録への機運盛り上げを図る。
コエグロは「カヤグロ」とも呼ばれ、初秋に刈り取ったススキやカヤを束ねて、円錐状に積み上げる肥料の保存方法。急傾斜地に作るのは、県西部の山間地に独特の風習だ。
今回、コエグロが登場したのは、同町中庄の水の丸ふれあい公園近くの町有地。10月中旬、「コエグロ作り体験ツアー」の募集に応じた県内外の参加者や地元住民団体「西庄良所会」の会員、一般社団法人そらの郷の職員ら10人が作業した。
上旬に刈り取って乾燥させた長さ2~3メートルほどのススキなどを束ね、支柱を中心にして積み上げながら足で踏み固め、高さ約4メートルのコエグロを仕上げた。強風で飛ばされないよう、くいを刺したりロープを巻いたりする作業も行った。
良所会は県西4市町の官民でつくる「徳島剣山世界農業遺産推進協議会」の構成団体。昨秋には同町西庄の泉野地区で、農業遺産アピール用のコエグロを作った。体験ツアーの実施などで継続的な交流につなげたいと考える町が、良所会とそらの郷に“日本一高い標高にあるコエグロ”作りを委託した。
水の丸地区は1960年代まで、コエグロの材料のススキなどを集める「カヤ場」だったとみられる。現在は、パラグライダーで大空に飛び立つ愛好家らが訪れる場所となっている。
良所会の平野重秋会長(64)=同町西庄、農業=は「多くの人の目に触れ、世界農業遺産登録の足掛かりになれば」と話している。
世界農業遺産は伝統農法や景観を保全し次世代へ残すため、国連食糧農業機関が2002年に設けた。徳島剣山世界農業遺産推進協は9月、「にし阿波の傾斜地農耕システム」を候補地域として申請した。