徳島県内の普通科高校を対象とした学区制について協議する県教委の「通学区域制に関する有識者会議」(座長・山下一夫鳴門教育大学長)は29日、「2020、21の両年度入試では学区制を撤廃しない」とし、学区制を当面維持することを確認した。短期間での大幅な制度見直しは受験生や保護者、学校への影響が大きいと判断した。県教委が、現在の中学2年生が受験する20年度入試から導入する新制度は、現行の枠組みを維持した上で小規模な見直しとなる方向。
大学、市町村教委、学校、PTAの関係者ら17人が出席し、非公開で意見交換した。県教委によると、学区制見直しを求める委員からも、維持を希望する委員からも「直ちに学区を撤廃すると生徒や学校が混乱する」「中長期的な課題だ」との意見が大勢を占め、当面は現行制度を維持する方針で一致した。
県内全域を通学区域とする城ノ内高(徳島市)が21年度から完全中高一貫校に移行するのに伴い生徒募集を停止するため、徳島市内の普通科を希望する学区外生徒の選択肢が狭まることについては「改善が必要」と判断。第1(県南部)第2(県西北部)第3(徳島市)の各学区で8~10%に設定されている流入率の変更など、新たな対策を検討する。
22年度以降の中長期的な学区制の存廃については、結論が出なかった。
会合の冒頭、県内の国公立中79校のPTA会長に学区制について「評価できる点」「課題である点」「望ましい改善策の在り方」の3項目を質問したアンケート結果を公表。改善策についての回答(自由筆記)は「生徒が自由に選択できる制度にするべきだ」などと学区制見直しや撤廃を求める意見が約3割、「現状維持を求める」など現行制度の継続を求める意見が約3割だった。学区制を巡っては、保護者の間でも意見が拮抗(きっこう)していることが示された。
有識者会議は年内に次回会合を開き、本年度中に方向性をまとめる。県教委は有識者会議の意見を踏まえた上で、20年度入試からの新制度導入を判断する。