環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案が衆院本会議で可決された10日、徳島県内の農業団体の関係者からは疑問の声が相次いだ。米大統領選でTPP脱退を主張する共和党のトランプ氏が勝利しただけに「日本だけが前のめりになっている」と政府に再検討を求めた。

 JAグループは日本のTPP交渉参加に反対し、交渉妥結後は国内農業の保護策を国に求めている。JA大津松茂(鳴門市)の佐竹弘通組合長はトランプ氏勝利に「予想外の結果だが、可能性はあった。政府はもっと様子を見る必要があったのでは」と採決は先走り過ぎだとの見方を示す。今後の対応については「農政が一層混乱してくるだろう。農業者や経済関係者の意見を改めて聞き、再検討してもらいたい」と訴えた。

 生産者の高齢化が深刻化している上、TPPによって安価な乳製品が流入、一層の弱体化が懸念される酪農業界。県酪農業協同組合(石井町)の原浅之組合長は「TPPの合意内容は、乳製品など重要5品目を聖域とした約束が守られていない。だまされたとしか思えない」と採決に憤る。さらに米大統領選の結果で発効が不透明となったことを踏まえ、「まだ国内手続きが進んでいない国が少なくない中、なぜ日本だけが急ぐのか」と首をかしげた。

 一方、県機械金属工業会の山本紘一理事長は、日本が他の参加国に輸出する工業製品は99・9%の品目で関税が撤廃されるTPPのメリットを強調し、「発効が難しい状況になったのは残念だ」と話した。