美波町奥河内の戎野雄大(ゆうた)さん(27)が、同町北河内で30年以上養鶏業を営む湯浅寛さん(62)から事業を引き継ぎ、今月から本格的に仕事を始めた。全国農業会議所の全国新規就農相談センター(東京)が行う「農業経営継承事業」を活用。2年間の研修を経て、飼育する鶏や販路を受け継ぎ、新規就農した。同事業による継承は同町で初めてで、県内では2例目。
湯浅さんは自宅周辺に鶏舎8棟(計約3600平方メートル)を所有し、徳島県産ブランド地鶏の阿波尾鶏を飼育。年間約9万3千羽を、阿波尾鶏を生産販売する丸本(海陽町)へ出荷している。
このうち4棟(約1800平方メートル)を戎野さんが有償で借り、約5万1600羽を飼育。5年後をめどに残り全ても引き継ぐ。
戎野さんは美波町出身で、旧県立水産高校(同町)を卒業後、都内の船舶会社に就職したが、2009年にUターン。湯浅さんの長男とは、同級生という間柄だったこともあり、5年前から鶏舎の清掃やエサやりなどを手伝っていた。14年11月から継承事業に基づき、働いていた。
湯浅さんは後継者がおらず、約10年前から体調を崩したこともあり、事業の継承を望んでいた。町から継承事業を紹介され、戎野さんに任せることを決めた。「いずれは誰かに任せたいと思っていた。信頼できる人に引き継げて良かった」と満足そうに話す。
戎野さんは「温度管理や鶏舎の清掃など、難しい部分もあるけど、やりがいを感じている。新しい鶏舎も建てて、5年後には約14万羽の出荷を目指して頑張りたい」と目標を高く掲げた。
農業経営継承事業 後継者不足や高齢化で事業継承を望む農家と、新規就農を希望する若者とをマッチングさせるのが目的。全国農業会議所などが農林水産省の助成を受け、2008年から行っている。農家には年120万円の助成費が2年間支給され、就農希望者はその間、農家で働きながらノウハウを吸収する。