これまで築いてきた日韓の関係を、根底から覆す判決である。

 植民地時代に強制労働させられたとして、元徴用工の韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国最高裁が、同社に賠償を命じる確定判決を出した。

 元徴用工の請求権は、1965年の日韓請求権協定で消滅したというのが、日本政府の立場である。韓国の歴代政権も同じ見解を取ってきた。それに反する判断は到底受け入れられない。

 文在寅大統領は、日韓の信頼関係が損なわれないよう、冷静に対応すべきだ。

 日本も韓国の反応を見極めながら、主張の正当性を強く訴えていく必要がある。

 訴訟は、41~44年に岩手県の製鉄所に送られた元徴用工が、未払い賃金や過酷な労働に対する補償などを求めて、2005年に起こした。

 裁判では、12年に最高裁が請求権は消えていないとの判断を示し、原告敗訴の二審を破棄。差し戻された高裁が13年に計4億ウォン(約4千万円)の賠償を命じた。今回、最高裁は同様の判断を示した。

 元徴用工の請求権を巡っては、日韓両国が長期間にわたり厳しい交渉を重ねてきた経緯がある。その結果、結ばれたのが請求権協定だ。

 協定では、日本が無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力資金を支払う代わりに、請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」ことを確認した。

 だが、韓国は日本の資金をインフラ整備などに充て、元徴用工への個人補償を十分に行わなかったとされる。

 05年には、協定を検証した盧武鉉政権が、資金は「強制動員被害補償問題の解決金が勘案されている」と断定。元徴用工らに、1人当たり最高2千万ウォン(約200万円)を支払っている。

 そうした背景があるにもかかわらず、最高裁が請求権を認めたのは理解に苦しむ。

 新日鉄住金が賠償支払いを拒めば、韓国にある資産を差し押さえられる事態が予想される。

 懸念されるのは、同種の訴訟が他に14件あり、70社以上の日本企業の敗訴が濃厚になったことだ。新たな提訴の動きが強まる可能性もある。それが韓国への投資縮小や撤退に発展すれば、日韓双方の損失は計り知れない。

 韓国は、従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意の履行にも消極的だ。

 今回の問題でも不誠実な対応を取るなら、日本は国際司法裁判所への提訴を検討せざるを得なくなるだろう。

 両国は政治、経済、文化面でのつながりだけではなく、北朝鮮への対応など、共通の課題を抱える重要なパートナーである。

 未来志向をうたった「日韓共同宣言」が発表されて、今月で20年を迎えた。歴史問題で再び関係を冷え込ませてはならない。