新基地反対の圧倒的な民意が示された沖縄県知事選から1カ月余。国の回答は強権的すぎないか。これでは県民の反発は強まるばかりだ。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を、政府はきょうにも再開する。県による埋め立て承認撤回処分の効力が、石井啓一国土交通相の決定で一時停止したためだ。

 工事は、県が8月に埋め立て承認を撤回し、中断していた。事業者である防衛省沖縄防衛局は、これに対抗して10月17日、行政不服審査法に基づき、国交相に審査請求を行うとともに、裁決が出るまで撤回の効力を失わせる執行停止を申し立てていた。

 石井国交相は「普天間飛行場周辺の危険性除去や騒音被害防止を早期に実現することが困難となるほか、日米同盟にも悪影響を及ぼしかねないという外交・防衛上の不利益が生ずる」と、効力を停止した理由を述べた。

 しかし考えてもらいたい。在日米軍専用施設の約7割が集中する沖縄との信頼関係が崩れれば、どれほど日米安保の障害となるか。

 政府は、唯一の解決策として辺野古に固執するが、普天間飛行場の代替機能を同じ島の中に求めても、沖縄の過度な負担は変わらない。もっと広い視野で解決策を探るべきだろう。

 そもそも、行政不服審査法に基づく国交相への審査請求は、行政処分で不利益を受けた国民を救済するための手続きである。沖縄防衛局が「私人」の立場で申し立てを行うのは無理がある。

 「国が国を裁くのでは公平な判断はできない」と沖縄県が反発するのも当然で、これが許されるのなら、意に沿わない地方自治体の処分を、政府はいくらでも覆すことができるようになる。

 3年前にも同様の手法で、沖縄県の埋め立て承認撤回を無効化している。批判の多い手法を使ってまで急ぐのは、来春の統一地方選と夏の参院選への影響を避けたいとの狙いも透けて見える。

 沖縄では、辺野古移設の賛否を問う県民投票が来春までに実施される。それまでに可能な限り工事を進め、移設計画を既成事実化したいのだろう。年内にも土砂の投入を始めるという。

 県側は、第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出るなど対抗措置を取る。主張が通らない場合は、裁判闘争も検討している。県民投票で再び多数の反対票を集め、民意を背に徹底抗戦する構えだ。

 安倍晋三首相は、今国会の所信表明演説の締めくくりに「平民宰相」として知られる原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」との言葉を引いた。「長さゆえの慢心」への懸念にも向き合うと力を込めた。

 その決意を忘れることなく、「対話による解決」を求める沖縄の期待に、謙虚に丁寧に応えてもらいたい。