伝統工芸などで卓越した技能を持つ人に贈られる2016年度の「現代の名工」に、徳島県内から和菓子職人の谷崎勉さん(67)=鳴門市撫養町小桑島=が選ばれた。厚生労働省が20日に発表した。表彰式は21日に東京都港区の明治記念館で行われる。
「技術者として評価され、素直にうれしい」と受賞を喜ぶ。
15歳で大阪の和菓子店に就職し、職人の道を歩んだ。1年目は、ひたすら練り切りを作ったりあんこを包んだりと修業に打ち込み、仕事の後も寮に材料を持ち帰っては練習を重ねた。
2年目のとき、大阪のデパートで初めて目にした工芸菓子の作品に衝撃を受ける。木や花が、砂糖で本物そっくりに作られていることに感動し、師匠の技を盗み見ては独自に菊や桜の花の作り方を習得した。「商品には直接結び付かないが、観察力や技術を磨くのに大いに役立った」と振り返る。
25歳で鳴門に戻り、独立。店の経営に専念するため工芸菓子の制作は断念し、商品作りに力を入れた。
なると金時と和三盆を練り合わせた「鳴門っ娘」を開発し、発売したのは07年。「徳島は食材に恵まれた場所。県民にも良さを知ってほしかった」と開発理由を話す。芋そっくりの見た目と味は高い評価を受け、13年には観光庁「世界にも通用する究極のお土産」にも選ばれた。
60歳近くになり、工芸菓子作りを再開した。来春開かれる「お伊勢さん菓子博」に向け、今も工芸菓子の大作に取り組んでおり、「お客さんを驚かせる作品を作りたい」と意気込んでいる。
並行して一般商品の開発にも考えを巡らせている。「お客さんが喜ぶお菓子をさらに作りたい。一緒に商品開発をする人材も育てていけたら」と目標を話した。