徳島県内で障害者入所施設に入所を希望しながら待機させられている障害者が2016年4月の時点で250人に上り、過去最多となっている。高齢の障害者が増える一方で、施設入所から在宅への移行を目指す国や県が入所施設の縮小を打ち出しているためだ。障害者団体は「在宅支援が十分受けられる環境が整っているわけでない。施設定員を先に減らせば行き場を失う人が増えかねない」と窮状を訴えている。
県のまとめによると、10年に146人だった入所施設の待機者は増加傾向が続き、6年間で100人余り増えた。一方で、16年の障害者入所施設の定員は1498人と、10年の1515人からほぼ横ばいとなっている。
その背景には、国、県が入所施設の新設、増床を認めないことがある。国は入所施設ではなく自宅やグループホームで在宅サービスを活用して暮らす「地域移行」を推進。県も第4期障がい福祉計画(15~17年度)で施設入所者の85人削減を目標に明記し、入所施設の縮小を目指している。
ただ障害者の地域移行を進めるには、障害者が共同生活を送るグループホームや在宅サービスの充実が欠かせない。県内のグループホーム入居者は10年の312人から16年は604人と倍近くに増えているものの、施設入所を望む障害者のニーズに合わないケースもあり、施設入所者の受け皿として十分に機能するか見通せない。
県は「待機者の大半は将来を見越して順番待ちのために入所希望を出しており、切迫した状況にある障害者は少ない」とし、日常生活を支えるサービスを充実させることで在宅への移行を進めようとしている。
知的障害者の保護者らでつくる県手をつなぐ育成会の川口始事務局長は地域移行への理解は示しつつも「十分な在宅サービスが受けられない地域もあり、家族が重い負担を負っている。現状では施設入所という選択肢は必要だ」と訴えている。