会見で握手する(左から)梶教授、野地澄晴徳島大学長、手代木社長、小崎客員教授=大阪市の塩野義製薬本社

 徳島大と製薬大手の塩野義製薬(大阪市)が、脳卒中の後遺症で手足がこわばったり突っ張ったりする「痙縮」を緩和する新薬の実用化に乗り出す。24日、大阪市の塩野義製薬本社で会見して発表した。徳島大が製薬会社と新薬開発するのは初めてで、徳島大が特許を持つ薬剤を元に、塩野義が製品化する。国内で痙縮に悩む約112万人の苦痛を軽減することが期待される。

 徳島大などによると、痙縮にはこれまでボツリヌス菌の毒素を使って筋肉の緊張を和らげる薬剤「ボトックス」が使われてきた。しかし、ボトックスの主成分である「A1型」の毒素は▽毒性が強く大量に用いた場合の安全性に問題がある▽1カ所に注射しても他の筋肉に拡散する▽抗体ができやすく、継続使用すると効果がなくなることがある-などの問題点がある。

 徳島大大学院医歯薬学研究部の梶龍兒教授と小崎俊司客員教授(当時大阪府立大教授)らは2005年から新薬を研究し、乳児ボツリヌス症の患者から発見した「A2型」の毒素を基に製剤「A2NTX」を開発。15年までに徳島大学病院で延べ200人以上の臨床データを得た。

 データでは、大半の人が1週間以内で効果を実感でき、1度の注射で3カ月ほど効果が持続した。また従来のボトックスでは60日後に足に注射した患者の手の握力が低下する副作用があったが、A2NTXでは握力にほぼ変化がみられなかった。薬が拡散せずに注射した箇所にとどまることも分かった。

 寝たきりだった患者が注射後1週間程度で立てるようになり、リハビリを経て歩けるようになった例もある。

 創薬支援事業に取り組む大阪商工会議所が仲立ちし、徳島大と塩野義が、徳島大の特許を使うライセンス契約を結んだ。塩野義は新薬の基礎研究に必要な多額のコストを省け、徳島大は特許料収入が見込める。

 今後、塩野義は安定供給するための技術開発を経て、19年ごろから新薬として承認を受けるのに必要な臨床試験などを行う予定。患者の元に薬が届くまでにはさらに5~6年程度かかるとしている。塩野義は新薬によって国内だけで数百億円の売り上げを見込む。

 会見で、手代木功社長は「脳卒中の後遺症で悩む方を、少しでも普通の生活に近い形に戻す手伝いができれば」と話した。梶教授は「新薬開発に成功すれば、後遺症に悩む多くの人を救うことができる」と述べた。