サウジアラビアへの国際社会の非難が強まっている。

 政府を批判してきた米国在住のサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館内で死亡した事件を巡り、サウジ側の説明が曖昧なうえ、捜査も不十分だからだ。

 サウジ側は当初、事件性はないとしていたが、二転三転の末に計画的な殺害を認めた。ただ、ムハンマド皇太子らの関与を否定し、首謀者も明らかにしていない。

 発生から1カ月が過ぎた。長引けばサウジの国際的な立場は悪くなるばかりだ。

 在外公館で反政府記者を殺害するという前代未聞の事件であり、断じて許されるものではない。透明性や公平性のある調査とともに、皇太子自身の説明も求められる。

 カショギ氏は皇太子が進める国内改革や、サウジのイエメン軍事介入を厳しく批判、安全を求めて米国に亡命したという。

 結婚手続きのため、10月2日に訪問先のイスタンブールのサウジ総領事館に入った後、所在不明となった。

 トルコ側は館内で殺害されたとの見方を示したが、サウジ側は「手続き後、すぐに退去した」などと主張。しかし、トルコなどによる総領事館捜索後、サウジ側は館内での口論と格闘により、偶発的に死亡したと説明を変え、サウジの情報機関員ら18人を拘束したと発表した。

 これに対し、トルコのエルドアン大統領は事件を「計画的な殺人」だったと指摘したうえで、サウジ側に首謀者らを明らかにすることや、18人の身柄引き渡しなども求めている。しかし、これらの要求にサウジ側は応じようとしていない。

 問題は、サウジ側が早期解明に消極的なことだ。

 サウジ検察当局は、容疑者が「事前に犯行を計画していた」と断定し、関与した全員を訴追するとしているが、皇太子はもとより、王室上層部の関与や指示の有無などについては完全否定している。

 ただ、事件に絡み皇太子の側近が解任され、実行犯に皇太子護衛らも含まれているとされる。末端の治安・情報当局者による「暴走」との説明は、説得力に欠けよう。

 皇太子は、国政のほぼ全権を掌握する立場にある。「改革者」として多くの支持を得ている一方、権力強化のために、対立する王族や体制に異を唱える人権活動家を弾圧している。

 サウジが最も恐れているのは、皇太子の威信が傷つくことだ。このため、トルコなどは、「次期国王」を守ることを最優先にした捜査が行われるとの懸念を示している。

 世界最大級の産油国で中東の雄であるサウジの混乱は、国際社会に大きな影響を与える。だとしても、表現の自由や人権が脅かされた事件である。このまま幕引きにするわけにはいかない。国連などの国際捜査による全容解明が急がれる。