徳島県内のスーパーや飲食店が、パート従業員の確保に苦慮している。人手不足の傾向が続いている上、徳島市に来春オープンするイオンモール徳島(仮称)の求人が始まったことが拍車を掛けており、従業員の流出を懸念する事業所も。外国人研修生を活用したり、時給をアップしたりして対策を講じている。
ハローワーク徳島によると、管内でパートタイムの9月の新規求人倍率は4・97倍で、リーマンショックの影響を受けた2008年度以降で最高だった。10月は4・22倍に下がったが、依然として高い水準となっている。
イオンモール徳島で専門店を除いた直営部分を担う「イオンスタイル徳島(仮称)」が求人を始めたのが要因。パート従業員の獲得競争が厳しさを増した状況が浮き彫りとなった。
イオンスタイル徳島は時給や福利厚生で優位に立っており、ハローワーク徳島の担当者は「既存店にとって脅威だ。今働いている人がイオンに行ってしまうケースもあるのではないか」とみる。
1年前に、イオンモールのライバル「ゆめタウン」を運営するイズミ(広島市)の傘下となったデイリーマート(美馬市)は9月から、ベトナム人研修生6人を総菜の調理スタッフとして入れた。さらに来年、再来年と6人ずつ増やし、計18人にする計画。研修期間は3年のため、その後は6人ずつを入れ替えていく。
藤原武志社長は「イズミの傘下に入ることでパートの時給が上がり、福利厚生も拡充した。待遇面とともに職場の人間関係を良くし、仕事に一層のやりがいを感じてもらえるようにしていきたい」とつなぎ止めに力を入れる考えをにじませた。
県内地域スーパーの代表格であるキョーエイ(徳島市)も、イオンモール徳島の周辺に複数の店舗を抱えており、売り上げ面だけでなく人材確保でも競合する。
人事担当者は「人手不足はずっと続いており、イオンモール徳島によってどのような状況になるのか。(既存スタッフの流出も)心配していないことはない」との認識を示した。数年前から導入している能力に応じた時給アップや、定年後の再雇用者の嘱託期間延長などでしのいでいく方針だ。
求人情報誌を発行するKG情報徳島支社(徳島市)によると、県内ではサービス・飲食業を中心に以前から人手不足の状況が続いている。特にここ最近はコンビニやスーパー、ドラッグストアの出店が相次ぎ、求人サイドの厳しさが増している。
求人広告の掲載や時給アップに踏み切る余裕のないところは、既存スタッフに勤務時間を延ばしてもらったり知人を紹介してもらったりしてやり繰りするケースもある。
求人情報課の担当者は「特に徳島では就業人口が減る傾向の中で出店が相次いでいるため、『働ける人がいったいどこにいるのか』といった状況になっている。さらに大型店がオープンすれば、先行きの不安感が強まるだろう」と話している。