徳島県警は、性犯罪の被害者から医療機関が採取した犯人の証拠を、被害届が出ていなくても公訴時効の成立まで保管する制度を導入した。精神的ダメージなどから通報をためらう被害者が少なくない中で、被害届を出す決意をしたときのために証拠を残しておくのが狙い。現在のところ徳島市内の診療所1カ所だけで対応しているが、他の医療機関にも広めていく。
新たな制度では、医療機関の医師は被害者の同意に基づいて被害者の体に残る犯人の体液や毛髪などを採取し、被害者名などの個人情報を伝えずに証拠として県警に引き渡す。県警は被害者の同意があればDNA鑑定を行えるが、この段階で捜査は始めない。
強制わいせつなどの罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪のためで、被害届を出すかどうかは被害者の意思に任されている。県警は時効(強姦罪の場合で10年)まで証拠を保管し、被害者は時効前に破棄を求めることもできる。
県警は10月から徳島市内の診療所に証拠の採取キットを渡し、被害者に対応できるようにしている。
県警捜査1課によると、今年1~10月、県警に被害届のあった性的暴行事件は2件(摘発2件)、強制わいせつ事件は24件(23件)あった。だが、被害に遭ったショックで通報をためらう被害者がいることから、事件が表面化するのは氷山の一角とみられる。
多田卓司捜査1課長は「被害に遭った場合は警察に届けてもらいたいが、証拠を残しておけば後日でも捜査ができる。制度を知っておいてほしい」と話している。
制度の問い合わせは警察総合相談センター<電#9110>または<電088(653)9110>。県の性暴力被害者支援センター「よりそいの樹とくしま」の共通相談ダイヤル<電0570(003)889>でも応じている。