難を逃れるために赴いたのに、なぜと思う。福島第1原発事故で山梨県に避難している中学生がいじめに遭い、自殺を図ったという。事故から7年7カ月たつのに、原発避難者へのいじめ被害は後を絶たない。子どもたちが二重三重の仕打ちを被っているのが、やりきれない
こんな深刻な事態が続いているのに、なぜとあきれ返る。東京電力が公式ツイッターなどに、廃炉作業が続く原発の建屋内部の画像を「#工場萌(も)え」というハッシュタグ付きで投稿し、「炎上」する騒ぎとなった
「工場萌え」は、工場の景観などへの愛好を強調する言葉。投稿直後から「事故の反省がないのか」と批判が殺到した。当然である
東電は3カ月前にも、原発の写真をあしらったクリアファイルを現地で販売し、非難を浴びている。「記念のグッズが欲しい」という視察者らの要望に応えた、との釈明は苦しい。毅然(きぜん)と拒まなかったのが不思議だ
深刻なのは避難者へのいじめだけではない。原発周辺は放射線量が高く、帰還困難区域の人たちは誰一人家で暮らせない。東電は現場を見続けているはずだが、感覚が鈍ってしまったのか
事故の過失責任を問う東京地裁の公判で、当時の経営者が「深くおわび申し上げます」と頭を下げたばかり。翻れば「萌え」と記念グッズ。謝罪の言葉が、むなしく響く。