棚田で酒米の稲を干す会員=10月30日、佐那河内村上

 徳島県内外の日本酒愛好家でつくる「棚田で地酒を造る会」が、佐那河内村の棚田で酒米作りを始めて20年目を迎えた。高地の澄んだ空気と豊かな水に恵まれた環境を生かして地酒をつくろうと左党が奮闘し、休耕田活用や用水路保全にも役立っている。今季も収穫を終え、会員は20代目の酒が出来上がるのを心待ちにしている。

 酒米作りは1995年ごろ、村をたびたび訪れて酒を酌み交わしていた数人が「良い環境で育った米を使えば、どんなに良い酒ができるだろう」と話し合ったのがきっかけ。97年、地元住民から休耕している棚田を借り、約30人が兵庫県で手に入れた酒米・山田錦などを育て始めた。

 ほとんどが米作りの初心者で、試行錯誤しながら除草剤などは極力使わず栽培。取れた米は三好市の酒造会社で仕込んでもらった。出来上がった酒は、江戸時代に徳島藩主に米を献上した村の田が「御殿田」と呼ばれていたことにちなみ「おでんでん」と名付けた。

 会員が増え、作付け面積も徐々に拡大。今は約70人が標高400~500メートルの水田約50アールで米作りをしている。今季は山田錦と雄町、亀の尾の3種を植えた。収穫を目前に控えた9月に台風で稲が倒れる被害にも見舞われたが、会員が稲を起こしながら刈り取り、10月下旬までに例年並みの約1・5トンを収穫した。

 酒造会社での仕込みを経て、来年2~3月には20代目の「おでんでん」が出来上がる。今川昭弘会長(72)=徳島市上八万町中山=は「手間暇をかけて育てた酒米。今年はどんな味になるだろう」と楽しみにしている。