20歳そこそこで構想していたことに改めて驚く。徳島市出身の漫画家竹宮惠子さんの「風と木の詩(うた)」である。ボーイズラブと呼ばれる少年同士の恋愛

 40年以上も前の話。少女漫画に革命を―の意気込みだったけれど、編集者には届かなかった。「ボツだ、ボツ」。通常なら万事休すとなるが、後の代表作を予感させるように、運もツキも味方して世に出る

 感性の一部を昇華させた作品を、劇作家の寺山修司らが激賞する。今でこそ、性同一性障害などの性的少数者(LGBT)への関心が高まり、多様性を認め合う大切さが叫ばれるようになったが、竹宮さんは早くから目を向けていた

 何の罪もない人が虐待され、差別され、事によっては命を絶たれる。理不尽さの程度は随分違うが、描かれていることはごく当たり前に起きている。徳島市で竹宮さんと対談した四国大の佐々木義登教授は言う。「世界の厳しさ、人間のもつ醜悪な面、運命の残酷さを安全な場所に居ながら教え、どう生きていくべきかを厳粛に考えさせてくれる」

 描かずにはいられなかった人間の本質に迫る作品は、今日的な問題に向き合う教材なのかもしれない

 画業50年をたどる「カレイドスコープ」。寺山の古里青森、徳島市を経由し、17日からは新潟で催される。時代が要請したような竹宮さんの特別展である。