トランプ米政権が、イラン産原油禁輸などの経済制裁を再び発動した。イラン核合意からの離脱表明に伴い、8月に発動した制裁に続く第2弾である。

 イランにとって原油は外貨獲得の要だけに、経済への打撃は計り知れない。

 追い詰められたイランが核合意から離脱し、核開発再開という無謀な行為に出るとの懸念も強まっている。

 憂慮すべき事態だ。日本は他の核合意参加国と協力し、イランの残留に全力を尽くさなければならない。

 トランプ政権が圧力外交を推し進めるのは、北朝鮮への「最大限の圧力」政策が非核化交渉につながった成功体験があるからだ。第1弾後も、イランの軟化に期待し、対話を持ちかけていた。

 対話の打診に際し、米国はウラン濃縮の完全停止やテロ組織への支援停止、核だけでなくミサイル開発の制限を盛り込んだ条約の締結といった要求を突きつけている。

 だが、イランは要求を拒否している。両国は相互不信に陥っていて、歩み寄りの糸口は見えない。

 そもそも米国は、自ら主導した核合意から一方的に離脱し、経済制裁を再発動した。イランが核合意に背いているとした理由は、真偽があいまいなままだ。

 国際原子力機関(IAEA)が8月末、イランは核合意を順守しているとの報告書をまとめたにもかかわらず、米国が無視して第2弾に打って出たのは理解できない。

 トランプ氏が核合意離脱を表明した5月から、イランの原油輸出は3分の2に落ち込んでいる。国家収入の約3割を石油関連産業に頼っているだけに、原油の制裁は深刻な打撃となる。

 イランは通貨安と物価高、失業の三重苦に見舞われ、国民生活は既に疲弊している。さらに圧迫され、国民の不満が高まれば体制の維持も危ぶまれよう。ザリフ外相は「核合意から離脱するのも選択肢の一つだ」と述べている。

 イランが離脱すれば、核開発の再開にかじを切る可能性が否定できない。そうなれば米国との本格的な対立に発展し、中東情勢が一気に緊迫化する恐れがある。

 第2弾の再発動を受け、イランは大規模な軍事演習を展開した。米国への牽制とみられるが、軍事的緊張は何としても避けなければならない。

 トランプ政権の強行に対し、核合意参加国の英仏独やロシアは「厳しく非難する」との声明を発表し、合意維持の決意を示した。

 第2弾が国際社会に与える影響は大きい。制裁対象の取引をした場合、米国との経済活動を制限される恐れがある。日本など8カ国・地域は180日間に限って原油輸入が容認される見通しだが、どのみち厳しい状況になる。

 米国が直ちに制裁をやめて核合意に再び加わるよう、あらゆる手段を駆使して働き掛ける必要がある。