徳島県教委が、過去の南海地震の被害や教訓などが刻まれた県内の「地震・津波碑」を国の登録記念物にするための取り組みを進めている。文化財としての位置付けを明確にして保護につなげるとともに、伝承活動を通じて防災意識の向上にも役立てるのが狙い。2016年度中に調査報告書をまとめ、17年度の早い段階で国に提出する。
県内の地震・津波碑は、海陽町や牟岐町、美波町など沿岸部を中心とする8市町に38基が確認されている。室町時代から1999年までの碑が残っており、一部は町の文化財指定を受けて保護されているものの、経年劣化が進んでいる碑も少なくない。
県教委は昭和南海地震の発生から70年を迎えるのを機に、今年から調査を始めた。碑文は拓本を取って解読し、碑が登場する文献も調べている。このほか、石碑の大きさや建立年、碑文の内容、石の種類などを調べて碑の文化的価値の裏付けを進めている。
登録記念物は、05年の文化財保護法改正で設けられた。遺跡、名勝地、動物・植物および地質鉱物が対象となっており、遺跡では、近代以前のもので「地域の歴史の特徴を表している」などが条件。登録記念物は16年4月1日時点で98件が登録されている。
地震・津波碑を登録記念物に登録しようとするのは全国で初めての試み。県内の碑で50年以上がたつ26基のうち、20基ほどの登録を目指している。
県教委教育文化課の大橋育順係長は「登録記念物となれば碑の存在をアピールでき、保護機運の高まりや防災教育への活用が期待できる」と話している。