神山温泉に対して、随契締結前のコンサル業者に重要経営資料を提出するよう迫った文書。町長印がある

 神山町が、第三セクターの「神山温泉」(同町神領)の経営診断事業を福岡市のコンサルティング会社に発注しようと、必要な手続きを取らずに温泉側に経営情報資料の提出を迫っていたことが26日、関係者への取材で分かった。町は300万円の随意契約を予定しているが、契約はまだ結んでいない上、コンサル会社は契約前に通常は求められる「指名願い」の提出もしていない。公正さや透明性が欠けていると批判が出るのは必至で、町は取材に対し、手続きの不備を認めた。温泉側は「顧客情報の流出が懸念される」として資料提出を拒んでおり、27日の取締役会で対応を協議する。

 町などによると、経営診断は法的に必要ではない。町の観光振興などにつなげようと、官民でつくる「神山つなぐ公社」の理事も務める福岡市の男性が提案し、町が実施を決めたという。町議会6月定例会で関連予算300万円が可決されており、このうち150万円は地方創生関連の国補助金を充てる。

 町は、理事から紹介されたコンサル会社「カーディナリス有限会社」(福岡市)との随意契約を前提に、9月には準備を始めていた。12月26日時点で同社と町は契約を結んでいない。

 温泉の社長は後藤正和町長。町は9月13日以降、温泉に対し「業者が必要と言っている」として、町長印のある文書やメールなどで、宿泊者情報が記載された「総勘定元帳」の過去2年分などの提出を繰り返し求めた。実務担当者らは「未契約の相手に顧客の個人情報の資料は出せない」と拒否している。

 また、町は同社と何らかの契約を結んだことがないにもかかわらず、企業情報や過去の業務実績を記した「指名願い」を同社から受け取っていない。

 後藤町長は徳島新聞の取材に対し、「これまでにない経営診断を行うには高度な専門性が必要だ」と業者選定の正当性を強調。大野富美雄副町長は「準備を急ぐあまり、先走った面があった。今回の件は不適切だった」と認めた。

 公社理事の男性は「町から『誰か専門家がいないか』と聞かれ、知りうる業者を複数例示した。業者選定やその後については関知していない」と話した。

 温泉の従業員は27日の取締役会に、反対意思を示す嘆願書を提出する。