民主主義は最悪の政治形態だ-。そう言ったのは英国の政治家チャーチルである。これには続きがある。「これまで試みられた、あらゆる政治形態を除いて」。不都合はあっても、最もましではないか、と
一人一人顔も違えば考えも違う。手間暇かけて妥協点を見つける。これが民主主義の基本だ。だから甚だ効率が悪い。我慢を強いられることも、たびたびだ
その効率の悪さを、熱狂のうちに乗り越える。それがトランプ米大統領の政治手法である。対立する者を口汚くののしり、批判する者には「フェイク」のレッテルを貼る。米国第一を掲げ、支援者の歓心を買うために、なりふり構わない
そんなリーダーに嫌気が差したか、中間選挙で国民は野党民主党に下院の過半数を与えた。ロシア疑惑を巡り、民主党は大統領の弾劾手続きに向けて動く可能性もある。政局が緊迫するのは必至だ
「終わりの始まり」と喜ぶ有権者がいる。でも、どうか。今回の選挙がもう一つ明らかにしたのは、トランプ的なるものへの支持の根強さではないか
自分さえ良ければいい。米国第一主義を焦げるまで煮詰めれば、残るのはこんな考えだろう。同様の風潮は世界に広がっている。対立はあって当然。それを踏まえ、一致点を探るのが民主主義である。米国はその常識を思い出すことができるのか。