身だしなみを整え、個性を発信し文化も生み出す服飾。数多くのブランドから新たなファッションが世に出されているが、その土台となる生地を扱う卸売業を大阪市で営む。「生地といっても織物と編み物は違い、素材の違いも合わせれば星の数ほどある。弊社で扱うアイテムは千点を超し、アパレルメーカーなどがほしい生地を即座に提供できるようにしている」

 「会社をつくりたい」。学生時代に思い立ち、その夢をかなえて7年目。大学卒業時は「超氷河期」と呼ばれ就職活動の厳しい時期だった。友人の多くは安定した生活を希望し大手企業を目指す中で服飾関係の商社を選んだ。「起業するにしても興味のないものは扱いたくない。ファッションに興味があったので、この業界で修行したいと思った」と振り返る。

 婦人服用の生地を扱う業務に携わり、服飾業界の仕組みを学んだ。生地製造メーカーの多くは中小零細企業で、得意分野は限られている。所在地も全国に散らばっている。「膨大な数の生地を集約し提供する。そんなワンストップサービスができればいいのではないか」。ビジネスモデルを練り上げていった。

 経験を積み、人脈を広げ、2008年に創業。着々と業績を伸ばしている。「ずっと取引がある企業も多い。今あるのは皆さんのおかげ」

 ただ、低価格な衣類の増加や少子高齢化など、服飾業界を取り巻く環境は大きく変化している。「今の業務は維持しながら、商品の付加価値向上や海外への販路拡大などを進めたい」と意気込む。

 徳島市出身で盆や正月には必ず帰省する。「関西にいて思うのは、距離の近さとは裏腹な知名度の低さ。徳島出身者でも地元の動きを知らない人が多く、もっと知名度が上がってほしいですね」。

 まつだ・こうじ 城北高を経て関西学院大法学部卒。2008年にルージュ・ブランを個人創業し、09年に株式会社化。社名は仏語で「赤と白」。ハートは熱く、頭脳はクールに、との思いを込めている。大阪市在住、39歳。