国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は心臓病や脳疾患といった循環器病に関する日本最先端の医療機関であり、医学研究機関でもある。40年近い歴史の中で、京都大や大阪大といった旧帝大の出身者以外がトップに就いた例はない。

 「誰でもトップに立てる時代になったということでしょう」と謙遜するが、出身の熊本大では臨床の分野を進み、診療の合間を縫って動脈疾患や狭心症に関する論文を相次いで発表。それらの功績が認められ、2011年にセンター副院長に登用された。14年から日本循環器学会代表理事も務める。

 センターは18年度に吹田市の旧国鉄操車場跡地へ移転する予定で、治療、研究、人材育成に加え、今後は民間企業などとの連携も求められる。難しい転換期のかじ取りを任され「円滑な組織運営を図り、目指すは世界一の病院」と意気込む。

 阿南市で生まれ、富岡西高校を卒業後に熊本大医学部に進んだ。専攻に選んだのは心筋梗塞や脳梗塞など過酷な症状を扱う循環器内科学。当時を振り返り、「患者の命を救うんだって気持ちが強かったね」。1981年には最先端の技術や知見が集まる同センターにレジデント(後期研修医)として移り、医療技術を高めていった。

 84年に熊本大へ戻り、徳島出身の教授らから親身に指導を受けた。両親は他界し生家はないが、熊本から飛行機で出張する際は眼下に阿南の街並みや海を見て、心のよりどころにしていた。現在もセンターの研究所長を務める寒川賢治さん(67)=板野町出身=と懇意にしており、「古里をいとおしく思う気持ちは消えませんね」。

 3人の息子は独立し、妻(62)と吹田市で暮らす。62歳。