現役東大生が講師になり、インターネットのテレビ会議システムを活用した小中高校生向けの遠隔ライブ授業を展開するベンチャー企業で、生徒と東大生をつなぐコーディネーター役を務めている。

 「講師が一方的に話すだけの録画授業ではなく、生徒たちの反応や理解度を確かめながら指導を行う、双方向型の授業スタイルにこだわっています」。地方創生の一環で、地域の人材育成に力を入れる自治体や住民組織からの問い合わせは多く、ライブ授業の特長などを説明するため全国各地を飛び回っている。

 大学卒業後、日本と米国のテレビ番組制作会社でプロデューサーなどを務め、経験と実績を積み重ねてきた。一昨年、ライブ授業を取り入れた上勝町を訪ねた際に、会社代表から企画力やコミュニケーション力を評価され、「一緒に仕事をしないか」と声を掛けられた。

 映像を使った授業で教育効果を高めるには、講師の目線や声量なども大切な要素だ。そこで「テレビ業界で仕事をしてきた経験が役に立つと思いました」と話し、「母親が教員で教育への関心もあったことから、映像の分野と教育の橋渡し役になれるよう全力を挙げたい」。

 「中学、高校時代は徳島を出たくて仕方がなかった」と振り返る。ただ、30歳を過ぎて古里に戻ったとき、新鮮で安くておいしい食べ物に胃袋をつかまれ、「なんてぜいたくな生活を送っていたのかと気付かされました」。

 徳島の観光振興や交流人口を増やすには、「県内全域に無線LANサービスのWiFi(ワイファイ)を整備したり、家族ぐるみで徳島に『留学』したくなるような英語教育の先進県を目指してはどうでしょうか。徳島が誇る農産物の販路拡大も強力に進めてほしいですね」。

 いのうえ・はるな 小松島市出身。小松島高校、京都外国語大外国語学部卒。日本テレビエンタープライズ(現日テレアックスオン)制作局、パブリック・ブロードキャスティング・アトランタ(米国)制作局、小学館集英社プロダクション・テレビ企画事業部で番組プロデューサーなどを務めた後、2015年5月からフィオレ・コネクション遠隔教育事業本部で勤務。東京都杉並区在住。33歳。