中央省庁の地方移転で、徳島県が誘致を提案している消費者庁は政府方針原案に「8月末までに結論を得る」と位置付けられる見通しとなった。3月13日から同庁の板東久美子長官らが神山町で試験業務を始めるのを前に、移転をめぐる国や県、関係団体の動きをまとめた。

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 「これまでも中央省庁の移転に取り組んできたができなかった。今回、地方創生の流れの中で何とか消費者庁の徳島移転を実現させたい」。2月20日、美馬市内で街頭演説した前消費者行政担当相で自民党の山口俊一衆院議員が力を込めた。
 
 中央省庁など政府関係機関の地方移転は、東京一極集中の是正を目指す安倍政権が「地方創生総合戦略」の主要施策に位置付けた。
 
 戦略では、企業の本社機能移転や移住推進の取り組みなどと併せて地方への新たな人の流れをつくり、2020年に地方と東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県)の転出・転入者数の均衡を図るのが目標だ。東京圏への転入は年10万人を超えている。地方からの転入を6万人減らし転出を4万人増やす算段を描く。
 
 東京の過密解消や首都直下地震に備える防災対策の観点から、これまでも中央省庁や国会などの移転構想はたびたび浮上してきたが、具体的に前進するのは1988年に移転方針を閣議決定した竹下政権以来となる。
 

 竹下政権当時、中央省庁の移転計画を取りまとめたのは各省事務次官らで構成する「連絡会議」だった。官主導で推進した色合いが濃く、移転対象71機関のうち、関東以外に移ったのは本州四国連絡橋公団(現本四高速会社、神戸市)と国税庁醸造研究所(現酒類総合研究所、広島県東広島市)の二つにとどまった。

 今回の取り組みが竹下政権時と違うのは、東京圏を除く地方自治体の誘致提案に基づいて方向性を定める点だ。移転のメリット、デメリットを有識者会議の意見を踏まえて検証していくシステムも採用した。

 昨年8月、有識者会議であいさつした石破茂地方創生担当相は「(審議過程を)国民に見てもらい納得していただく」と強調した。

 企業に本社の地方移転を促す以上、政府の本気度が問われる。河野太郎消費者担当相は「『隗(かい)より始めよ』だ。企業にお願いする以上、霞が関の役所も地方へ移らないと示しがつかない。消費者庁が徳島に移れるのなら他の省庁も(地方に)移れることになる」と鼻息が荒い。

 総務省が公表した国勢調査(2015年10月1日時点)の速報値によると、徳島など39道府県で10年の前回調査から人口が減る中、東京圏は約51万人増加し一極集中に歯止めがかからない。徳島県の人口は75万6063人で2万9428人減少。減少率はこれまでで2番目に高い3・75%だった。

 徳島県が誘致を提案する消費者庁と消費者委員会、国民生活センター(相模原事務所)の職員や委員は非常勤を含めて600人以上。移転が実現すれば、交流人口の増加や雇用の拡大、経済波及効果も期待される。

 同庁は県内での業務試行を通じて移転の可否を判断する方針だ。県地方創生推進課は「移転は地方の人口減に歯止めをかける突破口だ。支障なく同庁の業務が行われるよう県を挙げて準備したい」としている。