政府機関の地方移転をめぐり、徳島県が誘致を提案している消費者庁が発足したのは2009年9月。その前年、県内では「鳴門わかめ」を発端に、ウナギやタケノコの産地偽装が相次いで発覚し、食の安全・安心が大きく揺らいだ。

 偽装問題への対応過程で、法令ごとに担当省庁が異なる縦割り行政の限界を感じた県は08年5月、消費者行政を一元的に推進する新組織の発足や、業者に対する措置命令権限の県への移譲などを国に要望。これが消費者庁の創設や景品表示法の改正につながった、と県は胸を張る。

 政府機関の移転の目的は、東京一極集中の是正による地方創生の推進。移転が実現すれば、徳島にとっては人口増や地域経済の活性化が期待できる。問題は消費者行政にとってのメリットであり、「なぜ徳島なのか」という点だ。

 「消費者行政に関する事件や事象が起こったとき、最初に取り組み、提案して国を動かしてきた」「消費者庁の必要性を訴えたのは徳島であり、生みの親の一人と言っても過言ではない」。飯泉嘉門知事は誘致を提案した理由について、消費者行政の改革に貢献してきたことを強調する。

 全国モデルとなる先進的な事業に取り組んできたこともアピールする。例えば▽消費者大学校・大学院での地域の消費者リーダーの育成▽行政と消費者をつなぐ「くらしのサポーター」や消費生活コーディネーターの創設▽全国初の食品表示適正化条例の制定や食品表示Gメン制度による監視指導体制の構築-などを挙げる。

 人材面では、県と市町村の消費者行政職員と消費生活相談員の人口10万人当たりの配置率が14・53人(全国平均6・72人)で、全国1位である点もセールスポイントだ。消費生活相談員はさらに100人程度の増員を目指し、3月から資格取得に向けた特別講座をスタートさせる。

 県はこうしたことを踏まえ、消費者行政は国民の生活に密着した施策の展開が重要と指摘。消費者の現場、生産・加工・販売の現場を継続的、日常的に把握している地方にこそ、消費者行政の機能向上に必要なものがあると主張する。

 知事は「霞が関は消費者から非常に遠く、地方感覚が希薄。消費者行政に対して感性のある所へ行くことで現場のニーズが分かる」と徳島移転の妥当性を訴え、「徳島が良くなる、これは日本の消費者行政全体が良くなるという気概で臨んでいく」と意気込む。

 一方、こうした県の主張に対し、消費者庁の事務方の反応は鈍い。消費者団体などからも「消費者行政の機能が低下する」などと反対の声が上がっている。