徳島県が「消費者行政先進県」を掲げ、消費者庁の誘致に全力を挙げる一方、全国消費者団体連絡会(消団連・東京)や日弁連(同)などからは強い反対の声が上がる。
「極端な話、消費者庁が無くなるに等しい。一体何を考えているのか」。日弁連消費者問題対策委員会の山口広副委員長は憤りを隠さない。
日弁連は、政府機関の地方移転について「地方の活性化に資する」として評価している。ただ、それが消費者庁であることを問題視し、昨年11月にはいち早く反対の意見書を政府に提出した。山口氏は「消費者庁は他の省庁や関係団体との折衝や調整が最も必要な機関。電話やテレビ会議でできるわけがない」と言い切る。
消団連は1月に東京都内で反対集会を開き、「(消費者行政が)未成熟な段階で乱暴に地方移転することはこれまでの重要政策を放棄するに等しい」とするアピールを出した。消費者事故など緊急事態の対応に支障を来すというのが理由。事務局は「消費者行政の推進は政府の大目標だったはず」と批判する。
3月13日には、「徳島の先進的な取り組みを見てもらいたい」という県からの案内状を受け、河野康子事務局長が徳島市で開かれる消費者問題県民大会に訪れ、徳島の現状を確かめる予定だ。
消費者庁の官僚の抵抗も強い。県や同庁の担当者、有識者会議のメンバーが1月に都内で開いた協議では、官僚が異論を述べた。徳島県が全国平均を下回る消費生活相談員の研修参加率を示す表や、東京駅と徳島駅を起点とした各地への所要時間の比較図などを用意。人口10万人当たりでは徳島県が全国トップクラスの消費生活相談員数についても「消費者庁は多数の専門家に支えられている。絶対数は東京や神奈川などに比べて多くはない」などと主張した。
出席した県職員が「大都市と絶対数で比べられては困る」とあきれたほどだ。
反対は思わぬところでも上がっている。徳島が誘致を目指し、政府の移転検討対象となっている国民生活センター事務所がある相模原市の市議会は1月、移転に反対する意見書を国会と政府に提出した。事務所は同センターが要望して、旧米陸軍キャンプの返還跡地に建設。意見書では「返還跡地の地域優先利用を耐忍して国の施策に協力してきた地元の意思をないがしろにするもの」と反発している。
こうした反対意見に対し、飯泉嘉門知事は「一つ一つの課題を丁寧かつ誠実にクリアしていく」との姿勢を示している。移転に結び付けるためには反対する人たちの理解をどう得ていくかも大きな課題となっている。
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