消費者庁とともに政府機関の地方移転で検討が進むのが、京都府が誘致に名乗りを上げている文化庁。政府が今月中にまとめる基本方針には、国会対応など一部機能を除いて京都移転が明記される見通しだ。徳島県が求める消費者庁は今後の実証実験を経て8月末までに結論を得るとされており、京都の方が一歩先を行く。
京都移転の流れを引き寄せたのが一枚の要望書だ。1月14日、山田啓二知事をはじめ、経済や文化団体のトップら京都を代表する12人が上京し、政府に提出した。
「庁舎の建設費用は地元も応分の負担をする用意がある」「職員などの受け入れ(住宅など)には地元も協力する」。受け皿整備への協力について踏み込んだ文言を並べ、京都の熱意をアピールした。昨年12月、京都市内を視察後に「がっかりした」と府や市の対応を批判した馳浩文部科学相から「移転を前提に検討する」と前向きな発言を引き出した。
京都府と京都市は移転候補場所として公有地11カ所を提示している。移転規模や場所が分かっていないため京都側が負担する具体的な金額は固まっていないが、府戦略企画課は「既存の建物を改修する場合でも1、2億円では収まらない」とみる。受け入れ面では、職員や家族向けに住宅の確保、教育・福祉サービスなどの相談にワンストップで対応する窓口を設けることも検討している。
同課の野本英伸課長は「オール京都で踏み込んだ協力姿勢を示したことが評価されたのではないか」と話す。
こうした受け皿整備について、徳島県は京都ほど明確に打ち出せていないのが現状だ。
県が消費者庁の移転場所として提案している県庁9、10階は、移転が実現した場合は改装が必要になる見込みだ。費用負担に関し、県は政府のヒアリングなどで「できる限りのことはする」といった表現で協力姿勢を説明しているものの、それ以上に踏み込んだ言及はない。職員らの受け入れも、住宅確保に向けて関係団体に協力依頼はしているが、具体策は示していない。
県地方創生推進課は「まずは試験業務などを通じて問題ないと実証することが必要。地元負担や協力は、その次のステップでの課題となる」としており、当面は試験業務に注力し、消費者団体などから声が上がる「消費者行政が後退する」との懸念を払拭(ふっしょく)させたい考えだ。
とはいえ、受け皿整備は、京都府が文化庁移転を大きく引き寄せる要因になったことを考えると、重要な要素にもなりかねない。一方、負担が伴う場合は県民の理解も不可欠となる。
政府も地方も手探りの中、動き出した省庁移転。消費者庁は徳島に動くのか。3月13日、板東久美子長官が徳島入りし、14日から成否の鍵を握る試験業務が始まる。(おわり)