「保秘を確保したシステムを整備したとしても、(テレワークは)消費者庁の仕事になじみにくい部分があるのではないか」

 徳島県への移転の課題を検証する試験業務最終日の3月17日、記者会見に臨んだ消費者庁の板東久美子長官は、移転に向けた課題を次々に口にした。

 まず挙げたのは、緊急時の危機管理対応。消費者の安全に関わる重大な事態が発生した際、関係省庁とやりとりする必要が生じる。場合によっては緊急対策本部の開催など、官邸との連携が求められることもある。

 「この部分では保秘が重要になる上、消費者庁が事務局として中心になる。テレワークだけでするのは非常に難しいと感じた」との見解を述べた。

 次に国会対応の難しさを挙げた。法案担当の職員も試験業務に参加していたが、国会に提出している法案について対面で説明しなくてはならない事情ができ、滞在期間を早めに切り上げて帰京したという。

 法の執行面での課題も指摘した。消費者庁が所管する景品表示法や特定商取引法の違反行為に対しては、事業者への立ち入り調査や意見聴取などを実施した上で行政処分を決定する。長官は、特商法の対象事業者の7割が東京周辺にあるとして「現場に近い所で仕事をするということからすれば(徳島では)難しい」と語った。

 交通のアクセスについても「少し不便だなと感じた」と発言。今回の試験業務で、長官は出張先の長崎県大村市から徳島入りしたが、徳島駅に着くまでに5時間半ほどかかったという。

 約50分間にわたって行われた会見の大半は、移転にいかに難題が伴うかということに割かれ、ハードルの高さを印象付けた。記者の間では「移転できない理由を探しているようだ」といった声も出た。
 
 この会見について、県幹部は「一つ一つの課題を時間をかけて説明していたところからして、かなり仕込まれていたのだろう」と推測した上で、長官が挙げた課題は試験業務前から分かっていたことだと指摘する。

 県は、危機管理対応や国会対応に関しては東京・霞が関に消費者庁のサテライトオフィスを設置することを提案しており、そうした柔軟な対応で課題は乗り越えられるとみている。

 一方で、会議システムの音声トラブルや機密性保持の問題について、県幹部は「もう少し霞が関側のシステムを整備してほしかった。われわれは環境を整えた上での試験業務を提案してきたが、時間的制約もあって消費者庁側は現有システムがどこまで通用するかを試していただけ」と不満を隠せない。

 「今回の試験業務で課題の基本的認識はできた」とする県だが、長官の言葉からは移転に消極的な消費者庁の姿勢が見え隠れする。