徳島大や同大病院で改革を実現した手腕を見込まれ、県立病院の経営を任された。喫緊の課題として挙げるのは「機能分化と連携」。地域偏在による医師不足は深刻で、中核病院と地域の医療機関が役割を分担した上で連携する必要性を訴える。

 県内全体の病院ベッド(病床)数削減という難題も抱えている。県の推計によると、2025年に必要な病床数は14年比26%減の8994床。国は自主的な削減を促す方針だ。「県立病院だけの問題ではない。医師会などと丁寧な話し合いを持たなければ解決しない」と語る。

 併せて取り組もうと構想を練るのが、医療ビッグデータの構築。個人の病歴などをまとめた電子カルテを医師が検索しやすくすれば診療に役立ち、集積したデータは研究材料として活用できる。過剰な投薬の防止など、医療費の削減にもつながると期待している。

 3月までは徳島大学長として、イノベーションを起こし地域の担い手となる人材を育てようと、学部再編の旗振り役を務めてきた。病院長時代には、他の大学病院に先駆けてコーヒーショップやコンビニを院内に開設。「非日常空間の病院をできるだけ日常に近づけよう」と、美術作品を並べるギャラリーも設けた。

 医療への思いの原点は「体が弱かった」という幼少期にある。中学生時代に腎臓の病に侵され、一時期は満足に学校に通えなかった。医師に憧れ、徳島大医学部に入学。泌尿器科の専門医となってからは、出会いを大切にし、多くの声に耳を傾けながら、道を切り開いてきた。

 休日はのんびりと庭いじりをするのが日課になっている。娘2人は独立し、藍住町奥野の自宅で妻と2人暮らし。71歳。