[上」談笑する寂聴さん(左)と吉行淳之介さん(1966年ごろ撮影) [下」対談をきっかけに親しく付き合うようになった宇野千代さん(左)と寂聴さん(1982年ごろ撮影)

 徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが著名人30人と語り合った対談を紹介する特別展「寂聴対談展」が、23日から徳島市の県立文学書道館で開かれる。生き方や文学、社会問題など幅広いテーマに真剣に向き合う対談を通して、寂聴さんと相手の人となりが感じられる。6月5日まで。

 寂聴さんは、50年にわたって600人余りと対談してきた座談の名手。展覧会では、1966年から2015年までに行われた、作家を中心とした30人との対談を取り上げる。抜粋したパネルのほか、相手の著書、寂聴さん宛ての書簡や写真を展示する。

 対談相手は、同世代の小説家仲間や尊敬する芸術家、後輩の若手作家ら多彩な顔触れで、立場の違いによって、紡がれる言葉も変わる。

 同性の先輩との対談では、熱のこもった言葉の数々が垣間見える。宇野千代さん(1897~1996年)は、寂聴さんが結婚後北京にいたころに、徳島を舞台にした小説「人形師天狗屋久吉」を読んで感銘を受けた憧れの存在。作中の阿波弁の美しさを指摘した寂聴さんに、宇野さんは出身地の岩国と徳島、大阪の言葉を混ぜて新しい言葉を作ったと答えている。

 互いを「人間の裏表」と語るように気性がよく似た2人は、対談をきっかけに、宇野さんが京都の寂庵を訪れるなど、親しく付き合うようになった。展示では、「人形師天狗屋久吉」の原稿や初版本も合わせて見ることができる。

 洋画家三岸節子さん(1905~99年)との対談では、画集で見た絵画「ブルゴーニュの一本の木」に衝撃を受け、同じ芸術家として尊敬する三岸さんに会いたいと熱望したと語った。寂聴さんが上京してまもないころに上野駅で偶然見掛け、黄色の着物姿の三岸さんを見て「着物を着たい」と思い、初めて着物を作るとき黄色を選んだエピソードも明かしている。

 若い世代へのまなざしは温かい。作家でミュージシャンの辻仁成さん(1959年~)とは、阿波踊りからの帰りの飛行機で、徳島でのコンサートを終えた辻さんと座席が隣り合わせになったことで知り合った。辻さんが、寂聴さんの映画を撮りたいと語っている。

 「どうしてみんな、瀬戸内さんの前に出ると洗いざらい告白するんだろう」と語ったのは、演芸評論家で随筆家の江國滋さん(1934~97年)。長女で作家の江國香織さん(1964年~)の対談も紹介する。作家の遠藤周作さん(1923~96年)、吉行淳之介さん(1924~94年)とは、同世代の作家仲間として、打ち解けた会話を展開している。

 プライベートについてもひるまず尋ねて本音を引き出すのが、寂聴さんの対談の妙味。寂聴さんと対談相手の人柄とともに、2人の関係性にも触れることができそうだ。

 5月22日午後2時から、東京新聞文化部記者の岩岡千景さんによる講演「人を支える寂聴さんの言葉」がある(事前申し込みが必要)。問い合わせは県立文学書道館<電088(625)7485>。