熊本地震を受け、県内でも巨大地震発生への懸念は高まっている。徳島の海の安全を守る組織のトップとして震災対策を最重要課題に挙げ、「被害を想定して発生時の対応をシミュレーションし、準備と訓練を重ねたい」と力を込める。
阪神大震災で兵庫県宝塚市の実家が半壊。熊本地震では叔父夫婦が被災した。「災害は人ごとではない。しっかり備えなければ」。県や県警、消防、自衛隊などとの対話を重ね、連携強化に努める考えだ。
海が好きで、国民の安全を守る仕事に興味があったことから海上保安大学校に進学。これまで北海道から九州まで全国各地に赴任し、巡視船の機関長や業務管理官などを務めた。
思い出深い出来事は、2012年の福岡海上保安部時代。巡視船で沖縄県・尖閣諸島周辺に出動し、領有権を主張する中国の公船とにらみ合った。「一歩も引かない相手との根比べ。事故を起こさないよう緊張を強いられた」と振り返る。
物腰は柔らかく、ソフトな語り口だが、海上保安学校の教官時代は「鬼教官」として恐れられたという。「海の怖さをたたき込まねばと厳しくした。当時の生徒に会うと、人が違うようだと驚かれる」と笑う。
徳島での勤務は初めてで、京都府出身の妻(58)と一緒に観光地巡りや食べ歩きをして楽しんでいる。前任地の高知ではよさこい鳴子踊りのチームに入っており、早速、妻と地元の阿波踊り連に加わった。「足腰がついていけるか心配だが、地元の人と顔の見える関係を築いていきたい」。57歳。