「あせごのまん」のペンネームで小説を執筆している。旧宍喰町(海陽町)周辺に伝わる昔話「あせごの万」が由来。あせごは地名、万は主人公の万造から来ている。「流行しているものではなく、少し古い感じで、昔話をベースにしたようなホラー小説を書いています」

 徳島との県境に近い高知県東洋町生まれ。祖母と母は宍喰出身だ。祖父が話す怖い昔話、自然に囲まれた暮らしが創作の原点にある。小学5年になる直前に父の仕事で大阪に移ったものの、都会暮らしはなかなかなじめなかった。「毎年夏休みになるとすぐに祖父母の元へ戻り、1カ月ぐらい過ごしていた」

 中学生になって国語が好きになり、大学進学時は自然と文学部を選んだが、作家になりたいとは考えていなかった。大学の非常勤講師を務めていたころ、好きな作家が「35歳までに望みの仕事に就けないなら諦めたほうが良い」と書いたエッセーを目にし、一念発起した。

 仕事の合間を縫って執筆し、片っ端から文学賞に応募した。5年ほどたった2005年、「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。42歳になっていた。

 道が開けたように思えたが、今は出版不況のさなか。出版社の動きは鈍く、公募文学賞も減っている。学生に小説の書き方を教える傍ら、電子書籍などに作品を著す日々だ。「書きたくないものを書いても面白くないだろうし、自分の好きなものを書こうと思う」

 生家は既にない。それでも海沿いを抜け、つづら折りの山道の先にある生まれ故郷の姿は今も心に焼き付いている。「古里には愛着があり、徳島を舞台にした長編小説も書いている。機会があれば本にしたいと思っています」。

 ならさき・ひでほ 関西学院大大学院文学研究科満期退学。佛教大、大阪樟蔭女子大などの非常勤講師を経て2015年から現職。著書に「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」「エピタフ」(いずれも角川ホラー文庫)がある。大阪府高槻市在住、53歳。