徳島県内が紅葉シーズンを迎える中、行楽客や写真愛好家から「今年は色付きがいまひとつ」との声が聞かれる。赤や黄が鮮やかさに欠け、くすんだように見えるという。原因として挙げられるのは、勢力の強い台風が何度も県内に上陸、接近したこと。識者は「葉が強風で傷付き、葉緑体を十分に分解できなかったのでは」とみている。
那賀町沢谷では10月下旬からブナやモミジ、カエデなどが見頃を迎えた。週末を中心に大勢が紅葉狩りに訪れるが、レストハウス「ファガスの森高城」の管理人、平井滋さん(70)は「例年より色が落ちる。あれだけ台風が来ると・・・」とため息をつく。
10月27日、約1年ぶりにスーパー林道の通行止めが解除されて紅葉が楽しめるようになった高の瀬峡(同町木頭北川)も同様だ。近くの農業野口穂さん(68)は「水分不足で葉が丸まってしまっているようだ。猛暑の影響もあるのでは」と言う。
県西部で紅葉の撮影を続けている三好市池田町州津の広告写真家、坪根道生さん(53)も「ここ数年で一番悪いように感じる。依頼された撮影をキャンセルせざるを得ないこともあった」と話す。
県植物研究会の木下覚顧問(76)は「猛暑もあるだろうが、台風の影響が大きい」とみる。木下顧問によると、落葉広葉樹は気温が下がると葉緑体を分解して黄の成分が残ったり、新たに赤い色素を生成したりする。ところが今年は強風で葉に傷が付き、葉緑体の分解が十分できないまま枯れたため黄や赤が目立たず、くすんで見えるという。
木下顧問は「谷筋など風の影響を受けにくい所は、例年通り鮮やか」と勧める。気象情報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)によると、四国の平野部は11月下旬から見頃を迎える。