英国が欧州連合(EU)から離脱する交渉が、難航している。来年3月29日の離脱日まで5カ月を切ったが、合意を目指した先月末のEU首脳会議は物別れに終わった。

 実質的な交渉期限はひとまず年末まで先送りとなったものの、合意できるかどうかは不透明なままだ。

 合意しないまま離脱となれば、市民生活や企業活動が大きく混乱し、世界経済を揺るがす恐れもある。

 英国は混乱回避に向け、残留も含めたあらゆる選択肢を検討する必要があろう。

 英国では一昨年6月の国民投票で、賛否が拮抗(きっこう)した末に離脱が決まった。メイ首相が昨年3月にEUへ正式通知して以降、交渉が続いている。

 難航している最大の要因は、EU加盟国のアイルランドと同じ島にあり、隣接する英領北アイルランドとの国境管理をどう扱うかの問題だ。

 EUは互いの関税や通関手続きを撤廃する「関税同盟」に、北アイルランドを現行のまま残すよう提案した。ところが英国は「国家の一体性が失われる」と反発し、国全体を関税同盟として継続するよう訴えている。

 北アイルランドには「血の日曜日事件」をはじめ悲惨な紛争の歴史があるだけに、より慎重な判断が求められるだろう。

 そもそも、英国は人やモノ、サービスを自由に移動できるEUの単一市場から完全に離脱する強硬路線を掲げていたが、新たな貿易協定を結ぶよう主張。非関税を維持する半面、移民の受け入れは独自に制限する方針に転じた。

 これが「いいとこ取り」だとEUの反感を招いている。

 英国内の対立が深まっているのも問題だ。

 メイ氏は離脱支持を強固にしようと考え、3年の前倒しをして総選挙に踏み切ったが、与党の保守党は過半数を割り込んだ。

 移民問題を巡って国民の間に高まった離脱熱が、国民投票から2年余りたち、冷めた結果とみられる。その後の世論調査でも残留支持が45%と、離脱支持を3ポイント上回っている。

 EUとの連携を重視する最大野党の労働党は総選挙結果に乗じ、離脱を認めないとの攻勢を強めている。保守党内の離脱強行派からも、メイ氏の対応への批判が公然と聞かれるようになった。

 仮にEUと合意ができたとしても、議会の承認が得られない可能性が高まっている。

 「合意・承認なき離脱」となれば激変緩和の猶予すらなく、一斉に関税や通関手続きが発生することになって大混乱が予想される。

 離脱の期限を延長した上で、腰を据えて交渉する必要があるだろう。

 英国内では改めての国民投票を求める声も強まっていて、ロンドンで行われたデモには約70万人が参加したという。メイ氏は拒否しているが、再投票も考慮すべきではないか。