7年前に自宅に着付けサロン「きらく」を開設。「苦しくない、着崩れない、美しい着姿」と定評のある着付け師として活躍し、ノンフィクション作家の河添恵子さんら文化人、芸能人も訪れている。着付け講師も務め、コラム執筆も手掛けるなど着物文化の発信に多忙な日々を送る。
着物の世界に飛び込んだのは母方の祖父母への思いからだった。小学校時代の運動会など行事のたびに広島県から来てくれる祖父母はいつも着物を粋に着こなしていた。大学卒業後、都内の会社に就職し、結婚。2人目の子どもを出産したころ、祖父母が病に倒れた。何とか元気付けられないかと思案した結果「自分で着た着物姿を見てもらおう」と着付け教室に通い始めた。
3年後、満足に着られるようになった時に2人はこの世にいなかったが「祖父母が着物と私を引き合わせてくれた。今も天から後押ししてくれている気がする」と感謝を胸に仕事に取り組んでいる。
「着ていてすごく楽」と客から驚かれる。「着物は緩まないようきつく縛りすぎるから苦しくなる。左右対称に着せ、ひもはねじれをなくして真っすぐ当てる」と基本の大切さを強調する。職人が丹精込めて作った着物自体にも価値を見いだしているが、何より大切なのは「着ている人が輝くこと」。動きやすさを追求し、その人に合ったコーディネートを提案できるよう研究を重ねている。「着物を着ることで所作が美しくなったり、周囲に思いやりが持てるようになったりする。そんな魅力を若い人に伝えたい」
幼いころ遊び場だった吉野川の河川敷に花が咲く風景を懐かしむ。県外ランナーに徳島の自然の美しさを知ってもらえるとくしまマラソンに関心があり「いつか息子と出てみたい。もう少し距離が短い部門があればいいんですけどね」とほほ笑んだ。
もりた・ともみ 徳島市出身。旧姓吉成。徳島市立高、鳥取大教育学部卒。都内のアパレル会社勤務などを経て、2006年から着付け教室に3年間通い、09年に東京都大田区の自宅で着付けサロンを開業した。夫、2人の子どもとの4人暮らし。42歳。