フランスの哲学者で批評家のロラン・バルト(1915~80年)研究の第一人者。生誕100年に当たる昨年、「ロラン・バルト 言語を愛し恐れつづけた批評家」を出版し、20世紀の文学・思想シーンに大きな影響を与えた活動と生涯を紹介した。

 「自分の言葉でいかに語り、書き、表現するか。そんなバルトの言葉へのこだわりに共感し、自分の表現というものを大切にしている」

 あまり本を読んでおらず、すぐにインターネットに頼ってしまう今の若者に危うさを感じている。「人の言葉を簡単にもらってくる」と嘆き「自分の表現を考えるから自分の存在を肯定できる。コピペ(文章の切り貼り)をすると自分の存在を否定することになる」と学生に説く。

 パリ留学中に知り合った作家司馬遼太郎(1923~96年)と親交を重ねた。「物を書くときは概念に頼ってはいけない。概念を使いそうになったら黒板消しで消しなさい」とのユーモア交じりのアドバイスを、自身の執筆や学生指導の指針としている。

 高校教諭だった父の影響を受け、幼いころから本をよく読んだ。「シェイクスピアや夏目漱石みたいな文学者になる」と言って譲らなかった小学生時代を「生意気だった」と懐かしみながら、「好きなことを仕事にできて幸せ」と穏やかな笑みを浮かべる。

 99歳になる母の顔を見に月に1、2度帰省する。世界各国を旅してあらためて思うのは徳島の自然の豊かさや食材の豊富さ。「でも全国的にはまだ知られていない」と指摘。「阿波踊りは素晴らしいが、前面に打ち出し過ぎて『それしかない』と思われているのでは。阿波の土柱や県南部の海岸線など観光資源はたくさんある。それをしっかり伝えてほしい」と期待した。

 いしかわ・よしこ 藍住町出身。城南高校から京都大文学部フランス文学科に進み、東京大大学院人文科学研究科博士課程に在籍中の1987年10月から約5年間、パリ第7大文学研究科博士課程に留学。94年から専修大でフランス語を教えた後、97年4月から明治学院大文学部フランス文学科助教授、2001年4月から現職。神奈川県川崎市在住。