豚骨と鶏ガラの濃厚なスープに豚ばら肉が入った徳島ラーメン。フィッシュカツ、スダチ、鳴門わかめを使ったメニューをそろえ、名古屋で徳島の食文化を前面に押し出した店をオープンした。「名古屋で徳島ブームを起こしたい」と意気込む。

 ラーメン作りは、姉が嫁いだ石井町の店で身に付けた。名古屋で飲食店関係の仕事をしていた30歳のころ、姉から「店を手伝ってほしい」と頼まれ、悩んだ末に一人娘を連れて帰郷。小学校に通わせながら4年間、店が軌道に乗るように後押しした。

 一段落して名古屋に戻った後も、姉の店との付き合いは続く。徳島でラーメン人気が高まるにつれ、店舗を移転したり、インターネット通販に取り組んだり。新しい試みが始まるたびに帰省して力を貸した。

 社会人になった娘は名古屋で自営業を始めた。姉と娘の仕事の手伝いをするうちに「何の商売でもいいから、自分の店を持ちたい」と思うようになる。さまざまな商売を検討したが、行き着いたのはやはりラーメンだった。

 「ようやくお客さまに出せるレベルになってきたけど、最初は苦労した」。姉の店と同じ作り方をしても、満足のいく味にならない。豚ばら肉や鶏ガラといった食材が、名古屋と徳島では微妙に異なるからだ。分量や調理時間を変え、試行錯誤を繰り返した。

 5月に開店して3カ月足らずだが少しずつ認知度は高まり、常連も増えている。「徳島の味は、名古屋の人の口に合うのかも」と笑う。

 徳島でゆっくり過ごしたいと思いつつ、帰省すらままならない忙しさ。「阿波踊りを見に戻りたいところだけど、店を長く愛してもらえるよう、今は頑張るほかない」と気を引き締めている。

 おりぐち・ゆうこ 徳島市国府町出身。名西高校を経て東京福祉大卒。「らーめん屋徳島」は、徳島県と連携して県産食材の魅力を発信する「阿波ふうどスペシャリスト」に、名古屋市にある飲食店として初めて登録された。名古屋市在住、56歳。