徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 髄膜炎は脳の表面を包む脳軟膜とその外側にあるクモ膜の間にあるクモ膜下腔に炎症が生じて髄液が炎症細胞によって浸潤された状態、つまり髄液中から細胞が検出される状態です。また髄液から細菌が検出されたものを細菌性髄膜炎、検出されないものを無菌性髄膜炎と呼びます。無菌性髄膜炎の多くはウィルス性髄膜炎と考えられます。

 細菌性髄膜炎に罹ると高熱、頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害などの重篤な症状が現れて生命に危険がおよぶことがあります。その治療には抗菌剤を使用しますが、原因細菌には耐性菌が多く治療は困難を極めます。細菌性髄膜炎は生命に危険が及ぶだけでなく、治っても後遺症に苦しむことがあります。

 クモ膜下腔は本来無菌的な場所です。血液中や髄液中など無菌的な場所に細菌が侵入して感染症が起こることを侵襲性感染症と言います。侵襲性感染症は重篤な疾患ですが、このような重篤な感染症が起こるのは宿主が幼若で先天的または後天的に免疫機能や解剖学的に異常がある場合に多く見られます。

 髄膜炎は呼吸器系や消化管など隣接する臓器に起こった細菌感染や血液中に入った細菌が髄液中に侵入し、感染したものです。新生児や乳児ではただに機嫌が悪い、食欲がない、顔色が悪い、全身状態が悪いなどの症状で発病することがあります。

 小児の細菌性髄膜炎の主な原因菌には大腸菌、B群溶連菌、ヒブ、肺炎球菌などがあります。年齢によって原因菌が異なります。ヒブや肺炎球菌ワクチンの普及によって髄膜炎の発生数は減少していますが、小児にとって重要な疾患であることに変わりはありません。