キリンビールが5月から順次発売している都道府県ごとに味わいの異なる地域限定ビール「47都道府県の一番搾り」。徳島支社が2日に発売した「徳島づくり」の開発に携わった。入社以降、酒類の技術・商品開発を担当してきた経験を生かしてレシピを作り、「イメージに近い味に仕上がった」と満足そうだ。
徳島らしいビールを求め、昨秋に徳島市で開かれたワークショップに参加。地元の食や文化に精通する有識者から意見を聞いてコンセプトを練った。「徳島の人は普段は堅実でまじめだが、夏は情熱的な阿波踊りを心から楽しむ。オンとオフのめりはりが効いている」。そんな人々が仲間と卓を囲んで飲むビールとして「味わいは豊かに。それでいて豊かな食材の何にでも合うよう、香りと苦みは控えめですっきりと飲めるもの」との結論に至った。麦芽の量を増やし、通常の一番搾りよりぜいたくな一本が完成した。
岡山大農学部、同大学院で環境浄化などの研究に取り組んだ。研究開発を続けられる職に就きたいと、食品メーカーに絞って就職活動する中でキリンビールと縁があった。「酒を飲むのが好きだった」と笑いながら「人々の暮らしに身近な商品だけに、ダイレクトに反応が返ってくるのが面白い」とやりがいを感じている。
高校生の頃は県外に買い物に行くことが楽しく、徳島に物足りなさを感じていた。ネットの普及で何でも物が買え、どこにいても仕事ができる今、物理的なハンディは感じていない。今回の仕事を通じ、あらためて徳島の人の温かさ、食材の豊かさなど、魅力に満ちた町であることを再認識し「徳島で生きる人がその幸せに気付き、誇りに思えるかどうかが大切だ」と話した。
なかむら・そうさく 徳島市出身。城南高から岡山大農学部に進み、同大学院修士課程を修了した2007年4月にキリンビールに入社。生産本部名古屋工場を経て、10年9月から横浜市にある技術開発部酒類技術開発センターに勤務。13年1月から現職場。横浜市神奈川区在住。33歳。