徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
RSウィルスは鼻粘膜に感染するウィルスです。感染すると3~5日の潜伏期間を経て発病し、まず上気道炎が出現します。鼻水が出て発熱することもありますが、咳は少し遅れて見られます。年長児や成人では上気道炎の症状のみで数日で回復しますが、乳幼児では咳が増加してクループ症候群、気管支炎、細気管支炎、肺炎など、病気が下気道に広がっていくことがあります。
RSウィルスの病変が上気道から下気道に広がると喉頭から気管、気管支、細気管支、肺胞へと病変が進行します。それに伴って咳の増加、喘鳴の出現、多呼吸となり、陥没呼吸などの努力呼吸が著名になり、これに加えて哺乳力の低下による脱水症を起こし、低酸素血症となれば入院管理が必要になります。
この中で乳児にとって重大な病態は細気管支炎です。これはRSウィルスの感染による気道粘膜の浮腫、粘液産生の増加、気道上皮細胞の壊死による剥離、気道周囲の炎症細胞浸潤などによって気道内腔が狭窄します。その結果、喘鳴が聴取され肺の過膨張や無気肺が発生してガス交換が障害され低酸素血症となります。
このような呼吸障害の状態は呼吸機能が未熟な早産児や血行動態の異常がある先天性心疾患児、免疫不全児、ダウン症候群などでは発生しやすくRSウィルス感染症の重症化が見られることが知られています。
RSウィルス感染症に対して特別な治療法はありません。治療は去痰剤や吸入療法などを中心に対症療法が中心になります。感染予防に注意することが大切です。