徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 RSウィルス感染症には再感染が多く、流行期には年長児や成人など多くの感染者が存在しますから抵抗力のない新生児や乳児には感染機会が多くなります。感染した児の全てが重症化する訳ではありませんが、呼吸器系の未熟な早産児や呼吸循環器系に基礎疾患の有る児は重症化しやすいことが知られています。

 RSウィルス感染症は迅速診断キットで簡単に診断されるようになりました。2歳ころまでに全ての児が一度は罹る疾患であると言われます。本ウィルスは再感染が多く、感染を繰り返す度に症状は軽くなり単なる感冒で終わるようになります。初感染では重症化することがあり注意が必要です。

 RSウィルス感染症の治療には対症療法しかありません。年長児や成人では上気道炎の症状のみで終わりますが、早産児や先天性心疾患児では呼吸障害が重症化することが知られています。重症化することが予想される状態や疾患に対してはRSウィルスを構成するF蛋白に対するモノクローナル抗体の注射薬パリビズマブを使用して重症化を予防する処置が行われています。

 パリビズマブは非常に高価な薬剤ですから乳児全員に投与する訳にはいきません。在胎36週未満の早産児、血行動態に異常のある先天性心疾患児、ダウン症候群、免疫不全児には保険診療でパリビズマブの投与が可能です。RSウィルスの流行期間に1カ月1回の注射によってRSウィルスの感染を予防することが出来ます。

 RSウィルスに対しては感染者からの隔離、手洗いやマスク、せきエチケットなどによる感染予防策を講じることが大切です。