テレビドラマ「北の国から」などで知られる脚本家の倉本聰さんが、11月15日から12月3日まで徳島市内のイオンホールで「森のささやきが聞こえますか 倉本聰の仕事と点描画展」(徳島新聞社主催)を開く。仕事場と住まいがある北海道・富良野や全国のロケ先などで出合った木々と対話し、生命感あふれる点描画を生み出す倉本さんに、絵に対する思いを聞いた。 

「夜明け」

 「富良野の森の中に住んでいるので、僕の家の庭先にはよくシカが来る。親子連れが来て、子どもがおっぱいを吸っていたりする」。倉本さんは豊かな自然の中で木々を見詰め、点描画にしてきた。

 淡い色彩の森の中を、軽やかに駆け抜けていくシカたちを描いた一枚には<春/森は水の匂いと/光の粒に満ち/木々は/大地から水を吸いあげて/夫(それ)々(ぞれ)が/水の柱となる>という文を添えた。

 「春先の木に耳をつけるとサーッと水を吸い上げている音が聞こえる。確実に声を出していると感じる。嵐が来る前には『来るぞ』『来るぞ』と木が騒ぐ」
森の木々はそんなふうに話し掛け、倉本さんは「木と向き合うことで木の歴史や情、暮らしぶりを教えられ、探るようになった」と話す。

 例えば、樹齢500年の木なら、戦国時代に種を落として育ち始めた木だ。「われわれよりずっと古く、いろんな知識とか見たものが豊富に詰まっている」と言う。

 「イタヤの巨木」と題した作品には、老木からくみ取ったメッセージを付けた。<俺はこの森にずっと生きて/維新も戦争で死ぬ若者達も見て来た/平成/昭和/(中略)天明/安永/明和/宝暦。永い命を俺は愉しんだ/そろそろこの場所を子孫に譲ろう>

富良野塾の近くの森でスケッチをする倉本聰さん=北海道富良野市(倉本財団提供)

 

 長年ドラマの脚本に携わってきた倉本さんは、現場のスタッフと意思疎通を図るために、これから作ろうとするドラマのシーンのイメージを絵コンテに描いていた。

 そのうち絵にはまり、デッサンを学ぶようになった。「影の濃淡を点の密度や強さで出せないかと思ってやっているうちに面白くなり、点描画に入った」と振り返る。
線と影で描いたスケッチを、点描画に仕上げるのは主に夜。0・1ミリや0・03ミリの細いカラーペンを使って赤、青、黄などの無数の点を打ち、点描でグラデーションを作り上げる。

 「最後にスケッチの線を消すとバアッと点描画が浮かび上がってくる。その時の快感が何とも言えない」

 ユーモラスな作品もある。大木に取り付いて生きる宿り木をとらえた一枚は、繊細なタッチでぼかした幹に、宿り木が緑の葉っぱを茂らせている。<家賃も全然払う気がねえんだから>とは大木の嘆きだ。

 木から垂れたクモの巣にトンボが引っ掛かっている作品はとてもユニークだ。<近来にない美の傑作で永久保存だ>と、巣の造型に胸を張っていたクモが、巣を破ったトンボに怒る。<怒りをこめてゆっくり喰(く)ってやる>と。

 倉本さんは木を見ているうち、自然が人間の感覚に近くなってくると感じる。「変にねじれていたり、曲がった木が立ち直ったのを見ると、こいつは若いときにすごくグレて、どっかで立ち直ったなとか、擬人化して考えちゃう。嵐で倒されても芽が出て再生したり。人間社会に当てはめても、似たようなことがいっぱいある」とも。

 豊かな想像力で、森と木々の中に心を遊ばせた倉本さん。点描画の作品群も、森のように鑑賞者の心を遊ばせ、楽しませてくれるだろう。

 期間:11月15日~12月3日
 場所:徳島市のイオンホール
 入場料:一般800円、中高生300円(当日各200円増)
     小学生以下無料
 問い合わせ:徳島新聞社事業部<電088(655)7331>