「法律家として企業経営に関わる仕事を手掛けていきたい」。弁護士になり10年、大阪市内に事務所を開いて2年。弁護士同士の競争が激しくなる中で、企業法務に今後の活路を見いだしている。
法曹界とは全く縁のない家庭に生まれた。子どもの頃から弁護士を目指していたわけではないが、消防士の父からは「資格を取り、手に職を付けろ」と諭されてきた。
大学に入学した直後から弁護士の仕事に興味を持つようになった。在学中に勉強を始め、4年で司法試験に合格した。大学卒業後に法科大学院に入って司法試験の勉強に専念する道もあったが「親に入学金などの負担を掛けられなかった」と振り返る。
司法修習後に勤めていた大阪市内の弁護士事務所では、倒産した会社の債務整理や物品購入を巡るトラブルなど企業関連の案件を多く手掛けた。「顧客と深く関わり、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感があった。一方で、もっと早く頼ってくれれば経営危機を回避できたのにと悔しく思うこともあった」。経験を積み重ねるうちに企業法務を志すようになった。
「組織を離れ、自分の判断で仕事に取り組みたい」と思い立ち、2人の弁護士仲間と2014年に独立。現在は運送や不動産、建築関係の企業を相手にさまざまな法律相談に乗る。「訴訟対応もあるが、企業の経営課題を解決するサポート力が求められている。企業コンサルティングにも関わりたい」と意気込んでいる。
司法修習は徳島で行った。現在は多忙で、なかなか帰省できない状況が続いているが「たまに戻ると、子どもの頃に訪れた店や商店街が寂れており悲しくなる。関西のベッドタウンとして生き残るすべもあるのではないだろうか」と気をもんでいる。
とうない・けんきち 徳島市出身。城南高、大阪大法学部卒。大学在学中の2004年、司法試験に合格。06年から弁護士事務所で勤め、14年4月に大阪市中央区で心斎橋中央法律事務所を開設した。大阪市在住。34歳。