北海道でようやく雪が降った。森も「樹々」も深い眠りにつくのだろうか。身が引き締まる冬の便りは変わらず、北の国からやって来る
富良野の森に居を構え、ドラマ「北の国から」などを世に出した脚本家倉本聰さんの仕事と点描画展「森のささやきが聞こえますか」がきょう、徳島市のイオンホールで始まる。冬に始まり、冬に終わる、展示作から聞こえてくるのは樹々のつぶやきだ
森を歩くと樹々が語り掛けてくる。そこで思う。樹々よ、いつ生まれ、どう過ごし、老いたか。泣き笑い、怒りもあっただろう。心情に思いを巡らせ、作品は生まれた
この夏、福島市で点描画展を見た詩人和合亮一さんは、会場で南相馬市に住む人にこう話し掛けられた。あの津波で残った木々と話してみたいと思っているのだけれど・・・。「同じ気持ちです」と答えたという
作品に触れ、語り合いたくなった人は多かったに違いない。「倉本さんの心と目で切り取られた風景が隣にある、そんな親しさを感じさせてくれた」と和合さん。原発事故で避難を余儀なくされた富岡町、夜の森の桜も並ぶ。そのつぶやきは人間の営みの愚かさを突くとも
<どうせ下手くそな絵しか描けんのなら せめてその木の心のつぶやきに 耳を傾けて書き添えてやろう>。倉本さんの樹々は、対話するのを待っている。