プロ野球セ・リーグの巨人は今季、3位でレギュラーシーズンを終えた。球団ワーストタイとなる4年連続のV逸。チームは3度目の監督就任となった原辰徳新体制の下、ペナント奪還へ再スタートを切った。投手陣再建へ阿南市出身の水野雄仁氏(53)が投手コーチとして古巣に復帰。宮崎市で行われている秋季キャンプで若手を鍛える水野コーチに現状や来季への意気込みを聞いた。
-V奪還には投手陣の奮起が欠かせない。どう底上げを図るのか。
先発、リリーフ全ての面での整備が急務。キャンプでは一人一人に狙うポジションを明確に持たせて指導している。能力があり、可能性を持つ選手ばかりなので1軍で活躍できるようにする。
-秋季キャンプも終盤に入った。コーチの立場でどのように過ごしているのか。
若手のレベルアップと見極めのため、球場入りまでに前日の練習をビデオでチェックする。個々の体力データや故障の治癒具合、疲労度などの情報はタブレット端末でスタッフと共有し、選手の把握に役立てている。
-今季は菅野智之投手の活躍が際立った。リーグトップのチーム防御率にもかかわらず、優勝を逃した要因は。
菅野の8完封がチーム防御率を良くしただけ。これを除けば他チームと同じ程度という認識で、投手陣は全滅だったと言っていい。先発は6人そろうのが理想だが、今は菅野以外は横一線で競い合っている状況だ。
-18年ぶりに古巣の一員となった。常に勝利が求められるチームならではの重圧もあるのでは。
ジャイアンツでは個人の成績よりも、チームが勝つために動くことが大事。これはずっと変わっていない。前回は現役引退から3年目の就任だったので一緒に戦った仲間もおり、選手の兄貴分という感じだった。だが、今回は年齢も離れた選手がほとんど。前回と同じ指導方針では駄目だと思っている。会話がないと選手の考え方も分からないし、こちらの考えも伝わらない。グラウンドでは現代風のコミュニケーションを心掛けている。
-宮本和知投手総合コーチとの役割分担は。
今季、投手で2軍落ちしなかったのは菅野だけ。あとは全員が行ったり来たり。総合コーチは2、3軍を含め投手陣全体を見渡す役目もある。宮本コーチをしっかりサポートすることになる。
-巨人の元ドラフト1位投手として現役選手に伝えたいことは。
主観や経験を押し付けず、絶対的な数字の裏付けを基に指導する。選手もその方が納得する。とはいえ、実際に投げるのは人間。何万人もの観衆を前に「ジャイアンツを代表して投げる」という自信や気概を持った投手を育てたい。
-前回は長嶋茂雄監督、今回は原監督の下で働く。
ともにファンの「優勝してくれ、勝ってくれ」との強い願い中で就任した。だから「絶対に勝たないといけない」という目的は同じ。何が何でも勝つためにわれわれコーチ陣も最善を尽くす。
-日本一になったソフトバンクの森唯斗投手ら徳島出身の選手も活躍している。最後に地元ファンにメッセージを。
徳島の選手の活躍は球団に関係なく常に意識している。自分自身は久しぶりの現場。徳島の野球ファンにユニホーム姿を喜んでもらえればうれしい。来秋には「おめでとう」と言われるよう頑張りたい。
みずの・かつひと 阿南市宝田町出身。1983年春に池田高のエースで4番として夏春連覇し、84年にドラフト1位で巨人に入団。王貞治監督時代の87年に10勝を挙げてリーグ優勝に貢献した。その後は中継ぎや抑えとして活躍し、96年に引退。通算成績は265試合に登板し、39勝29敗17セーブ。99年から3年間、長嶋茂雄監督の下で投手コーチを務め、2000年には日本一を経験した。野球解説者を経て、原辰徳監督の就任に伴い、投手コーチとして再入閣した。